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8-(2) 情報を社内外に提供する「情報購買はアイディア次第でいくらでも可能」
私はやり方を変えました。
次に何をしたかというと、単純です。設計者のところ一人一人に出向いていって「どんな情報があったら便利?」と尋ねていっただけです。
その過程で分かったのですが、私の属す調達部門はユーザー(設計者)の欲する情報をヒアリングもせずに、Webカタログの導入を決めていたのですね。システムやインフラなどにお金を使うのに、何ら調査を行っていないという事実には愕然としてしまいました。
そうやって設計者からヒアリングして分かったことは、実に普通のことを求めているのだなということです。調達・設計間の会議録をいつでも見られるようにしてほしい、とか。同じ仕様のもので、どこのサプライヤーが最も安いかを知りたい、とか。他部門でどのようなコスト低減の取り組みを行っているかを知りたい、とか。どれもこれもお金を全く必要としないことばかりでした。
よく、こういう議論を耳にします。「まずはインフラが出来上がった。さてどんなコンテンツを流そうか」と。これはすごく悲しいことです。本来ならば、流したいコンテンツがあって、それを効率的に流すためのインフラを考慮すべきだからです。
上記程度の要求を満たすのであれば、メールを使えば十分でした。あとは社内webの空き容量を使い自分で簡単なHTMLを入力してホームページを作りました。
会議録をPDF化しホームページに貼り付けておく。毎期のコスト優位サプライヤー名を製品とともに記載しておく。また、他部門で実績のあったコスト低減手法を写真とともに紹介しておく。これだけのことです。効果は絶大で、私のもとには質問や情報提供が相次ぎました。
特に示唆的なことは、他部門のコスト低減手法を公開することでした。設計者たちは部門ごとに連携していますが、ほとんど横のつながりを持っていません。多くの設計部門を持っている企業では、「隣の設計部門が何をやっているかが分からない」ということが頻繁に起こります。実は、横軸で見ることができるのはバイヤーだけだったりするのです。そうであれば、横軸で見たときの情報を公開しないなんてもったいない。そう思ったのでした。
特別な方法も努力も必要としません。設計部門は、自部門への報告用にそのようなコスト低減の成果資料を既に作っているでしょうから、それを拝借すればよいだけです。そしてそれを配信する。これだけのことでもほとんどのバイヤーができていません。他部門が調達・購買部門を理解してくれないと嘆くよりも、まずは行動を起こすべきです。
世の中には「情報を与えれば与えるほど、自分に集まってくる情報も多くなる」という法則があります。バイヤーが社内に情報を発信しだせば、必ず情報も自然と集まります。それらの情報を元に社外に情報を発信し出せば、サプライヤーもバイヤーに注目せざるを得ません。これまでのように単なる「買い物」のレベルを超えて、全社を横断した要望を伝えることができます。
調達・購買部門は、社内と社外を結びつける媒体です。媒体とは「メディア」のことです。そして、メディアとはメッセージです。
調達・購買部門は「このサプライヤーの製品が優位だ」という情報を流すことによって、社内に採用を促します。また、「この製品は市況が高騰している」という情報を流すことで社内に注意を喚起します。
どのような情報をどのように流すか、という点において調達・購買部門はメッセージの発信機関であるべきなのです。