8-(5) 先端技術調達に特化する「先端技術調達への道」

8-(5) 先端技術調達に特化する「先端技術調達への道」

現在、アメリカの自動車産業に良いニュースがありません。どこも巨額の赤字を出し、人員削減のリストラ実施のニュースばかりです。その代わり、日系自動車産業の躍進がめざましい。そう報道されています。

しかし、違う見方もできます。アメリカの産業全体の動きが、モノづくりからソフトへ移行しているのではないか。アメリカはモノづくり大国であるのを止めたのです。

パソコンメーカーも本国にはR&D(研究開発)拠点のみを置いています。開発はアメリカ、半導体は台湾で前工程、韓国で後工程、組立ては中国、などということが珍しくありません。

アメリカで起こることは日本でも起きます。

かつて、フォードの大量生産方式が、アメリカから日本やヨーロッパに移転してきたように、ソフト・情報産業が日本を覆うときがやってきます。製造業においては、日本に残るのはR&D拠点のみ、ということが起きるのです。

もしこの予想が正しければ、日本のバイヤーは何をすればいいのでしょうか。

そのことはつまり、日本の製造業がモノづくりから脱皮せざるを得ないという現状と向き合うということです。

製造業なのに、モノを作らない。確かに、矛盾しています。しかし、その矛盾を受け入れねばならない時代にあっては、モノを買ってくる旧来のバイヤーが不要になってくるということです。

もちろん完全なくなるわけなどありません。ただし、かなり少なくなるだろうと言っているのです。もし、このことが実現になれば、バイヤーのやるべきことは二通りに分かれるでしょう。

① 日本より西の国、つまり中国や東南アジアの国々の製造業バイヤーに対して、「調達・購買業務を教える役割」を担う。今まで日本が築き上げてきた、そして、あなたが築き上げてきた製造業の調達・購買の本質を教える立場になるのです。もしくは、そこで実際に活躍するバイヤーとなるのです。そのときは、中国や東南アジアのサプライヤーを学ぶ必要も出てくるでしょう。

② 日本は、研究・先端技術開発に取り組まざるを得ません。だから、最先端の材料や最先端のデバイスや最先端の要素技術の詰まった製品を買ってくる「目」が必要となります。今までのような汎用品を買ってくるというスキルではありません。最先端の情報を常に貪欲に吸収し、情報自ら取りにいく「目利き」になる必要があります。あるいは無形材・ソフト、あるいはコンサルティング領域など、これまでとは異なった知識やスキルを吸収する必要があるでしょう。

さしあたって、①の役割をバイヤー全員が果たすことはできないでしょうから、②の先端技術が担当できるバイヤーにならねばなりません。

そこでは、これまで以上に、外国企業とのやりとりが増えるでしょう、情報収集の必要があるでしょう、勉強が必要でしょう、コストテーブルのみに頼らず調達の知識を総活用して値決めをする必要があるでしょう。

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