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8-(6) 電子調達の推進「私の経験」
電子調達と聞いて何のことなのか分からない人も多いでしょう。バイヤー業を始めたときから、パーチェシングプロセスが電子化されていれば、手書き伝票の時代と比較できるはずもありません。私自身がそうでした。
この項でいう電子調達の推進とは、ソーシングプロセスの電子化のことを指しています。ソーシングプロセスの電子調達化とは、リバースオークションやe-RFQ(オンラインでの見積り依頼、見積り回答)や電子カタログメンテナンスツール、電子データによるコストドライバー分析などがあります。既にこのようなシステムを導入しているところはたくさんあるでしょう。
しかし、これらのシステム・機能を使用しようとすると、実際は困難がつきまといます。リバースオークションの困難さについては別項で説明しました。e-RFQはどこまでやるかによって違ってきますが、結局は使いこなせなかったり、操作が複雑すぎたりして、結局手作業で行っているバイヤーはたくさんいます。電子カタログも、せっかくメンテナンスしても問い合わせはずっと電話やFAXなので更新されなくなったり、コストドライバー分析についても、データ量が莫大でまとめると何が言えるのかよく分からなかったり。
それは、その多くがユーザーにとって使い勝手が良いとは言えないからです。無駄な機能は多いけれど、常に使用する機能はあまり操作性が良くない。これでは、赤ペンを手に紙でやったほうがよほど効率が良いと思ってしまうでしょうし、少しプログラムソースが書ける人であれば「自分で作った方がマシだ」とも思うでしょう。
実際に、私はVBでコスト分析ソフトを作っていましたし、皆から活用されていました。あなたがいつか画期的な電子調達システムを作り上げ、企業に売り込みたいと思っているならば、この簡単な事実を覚えておいた方がいいでしょう。大企業の売っているソフトがあんなに使いにくく、効率が悪いのは、ひとえに広範囲の使用者を想定しているからです。たくさんの人の、たくさんの使用場面を想定すればするほど、付加機能は多くなり、処理内容も多くなってゆきます。
だから、あなたが単一分野でより優れたシステムを作り上げるのは難しくない。でも難しいのは、そういうシステムの存在を知らせることです。電子調達システム分野には既にたくさんの大企業がひしめいているので、ちょっとのことではそのシステムに気づきもしないでしょう。私はVBでコスト分析ソフトを作り皆から使ってもらっていた、と書いたのも私が働いていた狭い世界ゆえです。
難しい問題のもう一つは、その優れたシステム作成の費用対効果です。たいていの場合は、一介のバイヤーがシステムを多産することなどできないでしょう。そういうことができればすぐにでも一流のプログラマーになれるはずです。
とすれば、世の中にあるシステムを少し改良して使う、という選択肢が現実的な回答にならざるを得ません。「だから、現行のシステムが使えないと言っているじゃないか」。その通りです。ただ、「使えない」のではなく、「使うためには、必要なことがある」のです。何が必要かというと、リバースオークションの項目で書いた通り「業務プロセスの整備」です。
業務が標準化していないのに、システムだけで改善できるはずがありません。システムはソース通りに決まった動作をするだけなので、業務自体が例外処理ばかりであればシステムが「決まった動作」をやり続けることができないのは当たり前です。