社長の苦労、子知らず

社長の苦労、子知らず

金がない――。

中小企業の経営者と話していたとき、「なんちゅうたって、資金繰りが一番大変やね」と言われた。365日、売上と支払いと資金繰りだけが頭の中を駆け巡っているという。そうやって必死に集めてきた金を、社員たちがムダにしているのでは浮かばれない。

私は、製造業の調達部門に属するバイヤーとして、「とりあえず打ち合わせしましょうか?」という営業マンのフレーズにこれまで忙殺されてきた。

もちろん、対面して打ち合わせをすることの効果を否定したいわけではない。ただ、対面して打ち合わせをするほどでもないのに、「とりあえず」「まずは」打ち合わせしましょう、と言ってくる人は非常に多い。

今ではITツールが発達している。基本情報はメールでやりとりすれば良い。数千円でパソコンにカメラをつければ、動画でのやり取りもできる。製品情報であれば、ホームページを見れば良い。携帯電話だって、どんどん進化している。TV会議システムもかなり安くなった。

それなのに、対面して打ち合わせを必要以上に繰り返し、交通費と時間を浪費していて良いのだろうか。どこかに行けば、最低1時間はかかる。往復時間を考えれば、その2倍にも3倍にもなる。

なぜこの時間を短縮しようとしないのか。ITツールを活用しているアメリカの某企業では、主要取引先と対面する回数は、年平均2回だという。「とりあえず打ち合わせしましょうか?」君には、想像もできないことだろう。

対面せずに済んでしまうことは多い。営業マンであれ、バイヤーであれ、相手を打ち合わせにむやみに誘わずにITツールの活用をもっと真剣に考えた方がお互いのためだ、と私は思う。

あるとき営業車での一日の移動距離を自慢してくる営業マンがいた。それに対する私のコメントは「エコロジーと効率を無視なさっていますね」だ。

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