1ドル70円時代に生きる覚悟のない私たち

1ドル70円時代に生きる覚悟のない私たち

タイムマシンに乗って、将来に行こう。そこで未来の商売を見て、現代に適用すれば、誰だって大金持ちになれる。でも、問題は、タイムマシンがまだ発明されていないことだ。

ただし、「アメリカ」というタイムマシンはある。日本は、これまでアメリカの栄枯盛衰をなぞってきた。アメリカの現在像は、日本の未来像にそのままつながっている。アメリカを観察すれば、中小企業のビジネスのヒントがたくさんある。

そして、残念ながら、そのアメリカの「ものづくり」は現在、死にかけている。

アメリカで売買される商品は、モノから情報へとシフトしている。アメリカの自動車産業は死んだのではない。アメリカが捨てたのだ。もはやアメリカは「ものづくり大国」であることを止め、「金融・IT大国」に変貌した。

そのアメリカは建国以来ずっと資本主義を世界に押し売りしてきた。常に先端の商品を開発しては、世界中にバラまいた。近年では、資本主義の押し売りを加速させるためのツールとしてITと金融工学が発明された。

しかし、その発明品は現在巨大なモンスターとなってアメリカ自身を苦しめている。ボーダレスな資本出入は、イスラム世界にボタン一つで巨大マネーを引き寄せ、石油原産国に莫大な富をもたらした。資源大国のロシアも好調だ。日本で中小企業が1%の利益を必死に紡ぎ出している一方で、何百兆円という利益が中東・ロシアに流れ込んでいる。

これは「最悪」の兆しだろうか。ある人にはそうであり、ある人にはそうじゃない。

面白いのは一部の製造業系アメリカ企業が、現状を嘆くのではなく、むしろ積極的に中東・ロシアへの売り込みを開始したことだ。世界中の自動車メーカーのロシア進出が報じられているように、他業種の製造業系アメリカ企業たちも中東・ロシアへ向かいだした。それは、大企業だけではなく、中小企業だって同じことだ。

「ロシアがお金を持っているならば、そこに売ろう」というしたたかな戦略を持っている日本の中小企業を、わずかな例外を除いて、私は知らない。

ここで、日本の中小企業のホームページを見てみる。そのほとんどは、日本語のものしか用意されていない。すでにビッグ・マーケットとして認識されている中国語すらない。アラビア語・ロシア語を主とする人々が、ネットサーフィンで他国の中小企業に触れ、その技術力の高さに感心して商売を開始することもあるとは、想像すらできないらしい(そして、それは日本以外では起こっている)。

「なかなか売上が伸びなくてねえ」と嘆く中小企業の人たちに、私は最近「そりゃビンボー人(日本人バイヤー)ばかり相手にしているからですよ」と答えるようにしている。

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