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たのしい調達・購買改革ごっこ②
すると、ある購買平民は言いました。「購買係長、サプライヤーの数は減り
ましたが、海外輸入比率は上がらないんじゃないですか?」と。「今は海外
輸入比率なんてたったの4割ですよ。それを劇的に上げなければいけないな
んて。うわあ、どうしよう」。すると、購買係長は平然と言いました。「そ
んなの簡単だろ」。すると、購買係長は購買平民に、現在の海外輸入品目リ
ストを持ってこさせました。「このリスト品目が海外輸入品だな……」。そ
のリストを見て、購買係長は考え出しました。
しばらくすると、「よし! このリストは簡単に書き換えることができる!」
と言いました。購買平民たちは不思議な顔をしています。購買係長は、「考
えてもみろっ、今このリストに載っていないものだって、海外輸入品として
カウントできるものはたくさんあるはずだ! たとえば、隣町から買ってい
る製品は『国内調達品』としているが、その材料は海外産のはずだ! たと
えば原油を少しでも使っているものは、その分を海外輸入品としてカウント
できる。製品の20%くらいは材料のはずだから、その分をカウントするんだ!
あるいは、半導体が中に組み込まれているものだって多くはアジア品だ。そ
れもカウントしろ!」。
そこで購買平民たちは、まったくサプライヤーや製品を切り替えることなく、
書類上のみであっという間に「海外輸入比率7割」を達成してしまいました。
「ほら、意外に海外輸入品って多いだろう?」と購買係長は自慢気です。
めでたし、めでたし。
すると、ある購買平民は言いました。「でも購買係長、さすがにコスト削減
だけはできないんじゃないですか? 偽造した調達改革では、コスト削減効
果は出ませんよね……」。すると、これまた購買係長は自信満々です。「お
前、ウチの国で何年働いているんだっ! この国ほどコスト削減効果試算が
適当な国はないじゃないかっ! コスト削減効果なんてこちらの申告値をそ
のまま使うだけだ! だから、購買平民には、コスト削減効果を、『最初の
見積り』から『最後の見積り』を引いたもので計算させればいいんだ! そ
うすれば、効果なんてすぐ出たことになる。そうだ、サプライヤーからの値
上げ申請を抑制した金額も、コスト削減効果に加算するのも忘れるな!」
そこで購買平民たちは、通常の業務をなんら変えることなくあっという間に
「コスト削減3割」を達成してしまいました。なかには意図的に最初の見積
りを高めに出すようにサプライヤーに依頼した購買平民もいたようですが、
誰も気にしませんでした。
めでたし、めでたし。
しばらくすると、王様はヘンなことに気づきました。サプライヤーは減って
いる、海外輸入比率も高まっている、コストも削減されている。でも、国の
財政だけはまったく改善しないのです。どうしたことか。王様は思いました。
「そうか、お金はきっとブラックホールに吸い込まれているんだな」と。そ
うです。今年は2010年。キューブリック『2010年宇宙の旅』よろし
く、きっとどこかに消えていったのです。
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上記はもちろん、仮想の国の物語である。昨今、メディアで調達・購買改革
の記事を見ることが多い。直に会話をする限り、ほんとうの調達・購買改革
を目指しているところは少なくない。ただ、一方で多くの企業では、調達・
購買改革は「効果がある」ものの、なぜか全社の業績には連動しないという
奇妙な「事件」が起きている。まさか、とは思うが、このような購買係長が
<活躍>していないことを祈る。