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調達・購買・資材の2011年を読み解く②
私は、材料調達を失敗してしまった担当者と話をしたことがあります。「なぜ材料の逼迫を
予想できなかったのですか」という質問に、「市場全体がそうなっていましたから」と
いわれました。そりゃ、そうだろよ、と私は心のなかでツッコミをいれました。そんなことは
わかっている。私が聞きたいのは、あなたの仮説だ、と。仮説がなければ、その失敗を
繰り返すだけです。先哲の言葉を借りれば、「運を天に任せる調達」にしかなっていない。
これは私が材料調達の答えを持っているといいたいわけではありません。
そうではなく、せめて調達・購買でメシを食っているのだから、自分の仕事に仮説をもって
取り組むべきではないかと感じたまでです。
CPIの値はチェックしていましたか。先物の動きはどうなっていましたか。移動平均や
先行指数は調べていましたか。仮説を立てて調べてみる項目はいくらでもあるはずです。
何度もいいますが、これが答えではありません。ただ、資源のない日本人に残された
「仮説思考力」だけは、保持してほしいと思うのです。
これまでの時代のキーワードを列挙してみます。
・2008年 好景気「実感なき経済成長」「円安バブル」
・2009年 世界同時不況「世界経済、終わりの始まり」「金融システムの崩壊」「信用不全」
・2010年 新興国台頭「中韓に抜かれる日本」「円高・デフレ不況」「LCC席巻」「FREE」
そして、
・2011年 脱・日本「World is ultra Flat」
が抽出されざるをえません。
そのとき、私たちは何ができるでしょうか。もちろん、かっこいい言葉でごまかすことはできます。
ただ、皮相的な言葉遊びをしている場合でしょうか。
「World is ultra Flat」とは、日本人と新興国の労働者が等価になってしまうことです。
これまでのような「行き当たりばったり」の「なんとなく仕事」を続けていけば、
間接業務が海外に流れていくことは目に見えています。
なんたらソーシングとか、なんたらマネジメントとか、そんなカタカナよりも、もっと大切な
ことがあるのではないか。それは、目の前の業務に、いかに付加価値をつけていくかという、
古臭いものです。他の労働者ができない深度で、仮説を立て、それを愚直に仕事の改善に結びつけて
いく試み。それは、日本人のお家芸であるカイゼンがもっとも発揮できる領域ではないでしょうか。
その意味では、原点回帰の年ともいえるかもしれません。
繰り返します。なんたらソーシングとか、なんたらマネジメントとかよりも、日本企業が一丸となって
復活の仮説を立てること。そしてそれを真摯に検証していく過程でしか、2011年の進歩は
ありえないのだ、と私は思います。
材料の調達は現在の方式が最適ですか。部品調達は最適ですか。金型は、ソフトウェアは、業務委託は、
通信、MRO、その他もろもろの調達は、最適ですか。市場の上下落にかかわりなく、現在より
改善できることはないでしょうか。
日本人の強みは、マニュアル外のことです。現場の小さな小さな改善の重なりが、全体としての
競争力向上につながっていきます。
「2011年は、カタカナや英語ではなく、ひらがなの調達改革を」
世界と対峙する2011年だからこそ、地を固める施策をこそ聞きたい。
仕事とは単に同じことをやり続けるだけではなく、より良い姿を目指して、
思惟と仮説のなかからおのれの生き様すらも
見直していこうとする意思そのものだ、と私は思うのです。