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工場の見方①
異常に落ち着かない。
講演や講義のまえ、私はつねに言いようのない不安に襲われる。
何を語ろうか。どういう比喩を駆使すべきか。手振りはどうすればいいか。
声の大小ではなく、高低をどうつければいいか--。
講演や講義の直前まで、パソコンで仕事をしている人がいるけれど、私からすると信じられない。それからはじまる講演や講義を、直前までより良くするよう試みるのが当然ではないか。
講演や講義の寸前まで抗うことは、きっと成果をもたらす。とはいえ、事前の準備が役たたない場面もある。
冷や汗がでる経験があった。
ある講演のときだ。その講演では、音を使う必要があった。ビジネスパーソンの仕事で交渉が占める比率が高い。交渉とは、いわばコミュニケーションの積み重なりだから、それを抗議しようと思えば、机上の解説だけではなかなかうまくゆかない。そこで、素晴らしい交渉者の映像データを持ってゆくことにした。
講演がはじまった。いよいよ、優れた交渉者の映像データを観客に見せるときがやってきた。想像してほしい。おそらく、観客は200名ほどいたと思う。ザーッと音がした。画像は流れたが、音は流れなかった。部屋のうしろで主催者たちがあせりはじめた。どうやら、スピーカーが壊れた(あるいは壊れていた)のだ。
どうしよう。