工場の見方②

工場の見方②

もし音声が流れないとしたら、これからの2時間は台無しになる。すべて音に頼ったコンテンツにしていたからだ。そこから自分がどうしたかは、ほとんど覚えていない。たしかい、画像を流しながら私がアニメの吹き替えをやるかのように、交渉者の口ぶりを真似して観客に伝えた気がする。冷や汗が出続ける経験だった。

もう一つ、冷や汗がでる経験があった。

あるメディア企業から講演に呼ばれたときのことだ。私を含めて数人の講演者が予定されていた。舞台袖に待っておき、順番に講演をすることになっていた。ただ、何かのトラブルで基調講演者が講演できない状況になった。かといって観客はすでに集まってしまっている。

司会者は、突然、私を含む数人に「何か今日のトピックについてお話いただけることがあれば……」と質問した。割り振ると、一人あたり20分もある。自分の講演時間は、別に用意されている。それとは違う20分だ。私は、何を話したか覚えていない。ただ、何か無我夢中に思いついたことを述べた気がする。

二つの「冷や汗がでる経験」を語った。

面白いのは、その二つの経験とも、評判がすこぶる良かったことだ。自分でも何を話したかわからないのに、観客からは「臨機応変で、えらく楽しく、そして、よかった」とアンケートに書いていただいた。主催者からも、「大変助かった」と言われた。

いや、それでも冷や汗はひとの寿命を縮めるので望むものではない。

ただ--、と思う。きっとたまたまうまくいったのは、講演や講義の直前までそれをよりよくしようと試みていたからではないか。その努力があったから、偶然にもトラブルを切り抜けることができたのではないか、と。

私は宗教的なものをまったく信じないけれど、その程度の偶然であれば信じてもいいな、と思った。

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

mautic is open source marketing automation