電話を切る勇気、負けない勇気①

電話を切る勇気、負けない勇気①

社外の説得よりも社内の説得のほうが骨が折れる。
これは、おそらくほとんどの調達・購買担当者の実感ではないか。

何かの製品の図面が出てくるとする。
すると、設計者は「ああ、この部品はすでに○○社と話をしているので、あとは安くなるように交渉だけやって」と言ってくる。
価格を安くするための勝負は、サプライヤー決定後ではなく、その事前に決まると、知ってか知らずかそんな依頼だけを受け続けている調達・購買担当者はたくさんいる。

サプライヤーを自由に決めることができたらどんなにいいだろう、と思いながら、自分の仕事を変えることもできず、また「資材・調達・購買」とはその程度だと社内の雰囲気があるから、それに抗えず社内下請けのような仕事を続けている調達・購買担当者がいかに多いことか。

ある日のことだった。

設計者から電話がかかってきたことがある。「この仕様は、このサプライヤーしかできない」と言い、しかしながら「コストは安くするのがお前の仕事だ(大意)」と言い放った。そこで少し議論を繰り返したが、どうしようもないと思った私は、「ふざけるな、この野郎!」といって電話を切った。

そのとき周囲の暖かな眼差しといったらなかった(笑)
それ以降、その設計者がどれだけ優しくなったことか(笑)

普段は優しい人間が突然怒り出すと、なかなか効果的である。そして、それはなんとか自分の尊厳を保つことだろう。
最近、コミュニケーションという言葉が誤用され、単に効率的な伝達だけを目的としているように思えてならない。

コミュニケーションの基本は、ある種の「勇気」である。

・言語化は、わたしたちの夢を実現させる

コミュニケーションとは言いたいことも言えずに、相手のことを思いやるだけのことではないだろう。
真摯にぶつかり、ギリギリの線に勇気をもって立ち向かうことが大切だ。

どうも、最近の20代の調達・購買担当者に欠けているのは、この勇気のような気がしてならない。
自分の意見も言わない。ぶつかろうともしない。それで、「設計者がすべてを決める」と文句ばかり言っている。
お前、なめられているだけだぞ、と言ってやりたくなる。
いや、言ってしまった。

相手を尊重しない調達・購買担当者は無視される。
しかし、相手の言いなりにしかなれない調達・購買担当者も同じく利用され、使い捨てにされるだけだ。
誰が物言わぬ奴を優しく気にかける者などいるものか。

そして、一つ気づいたことがある。私の周囲だけだろうか、優秀な調達・購買担当者というのは、「よく話す」のである。
いや、もっと言ってしまえばどんな分野でも一流の人で静かな人はほとんどいない。
これは、「相手の話を聞く」態度と、なんら矛盾するものではない。相手の話は良く聞く。しかし、自分の考えを述べさせると、とことん話すのである。

おそらく、話すことで自分の思想を固め、そして、その会話の中から相手の情報を引き出そうとしているからだろう。
言葉は実態ではない。
しかし、その言葉にするというプロセスのなかで、漠然とした目標を具現化し、達成するのである。
実現するから言葉になるのではない。
言葉にするから、それが意識にあがり、現実になるのである。

たとえば、「30%下がるアルミ電解コンデンサメーカを探す」とか、そんなことを言っていた調達・購買担当者がいるとしよう。
すると、その調達・購買担当者はたまたま通りすがった展示会や、たまたま見た雑誌の中で紹介されている「現行より30%安いアルミ電解コンデンサ」というフレーズを「偶然にも」発見せざるをえないのである。
普通であれば通り過ぎているところを言語化し意識化していたために、発見せざるをえないのである。

そのようにして言葉を発する調達・購買担当者は、次々と目標を達成していき、そうでない調達・購買担当者はこれまでと同じような退屈な終わりなき日常に埋没していくのである。
これはオカルトではない。
言語化することにより脳が働きだすという、きわめて当然のことなのだ。

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