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日本車とは何なのか
先般の報道で、トヨタ自動車が米工場で生産するエンジンを日本に逆輸入すると報じられた。また、トヨタ自動車は、東南アジア工場から中東への輸出も拡大するという。同じく、日産自動車はアジアで増産するともいわれた。ものづくりの拠点は、日本から一気に海外へとシフトしたようだ。
この展開は想像できたものだ。日本政府に対して産業界は「円安にしてくれ」と圧力をかけている。しかし、その一方、(良い意味で)したたかな企業は円高対策として生産工場の海外移管を進めてきた。
かつて日米貿易摩擦なるものがあったと歴史はいう。日本車がアメリカ車を食い尽くす、と。しかし、いまではほとんどそのような議論は目にしない。もちろん、日本という国家の衰退もある。ただ、その議論が消えた理由は、もう「日本車」というものがアメリカから姿を消したからである。そしてアメリカ車というものもなくなったからである。
どういう意味だろうか。それは、日本の完成車メーカーの生産工場はアメリカに根付き、雇用者のほとんどは現地人になったからだ。それに引き換え、これまでアメリカ車を作っていたメーカーのほとんどは主要工場をカナダや南米などに移管してしまった。アメリカ人にとっては、もはやホンダやトヨタこそがアメリカ車になっているのである。
ここから考えるに、「日本自動車メーカーが海外生産を加速」という見出しにどれほどの意味があるものだろうか。もはや、日本自動車メーカーは株主が日本にいるだけで、すでに実体は海外メーカーと同じである。そう見ると、単に最適生産をしているだけのことではないのか。それはクールすぎる見方かもしれない。ただ、もはや「日本車」「アメリカ車」という区分が意味を持ち得なくなっていることだけは指摘しておきたい。
そして、もう「○○国生産」という言葉すら意味がなくなる時代が、すぐそこまで来ている。