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コスト削減に潜む大いなる矛盾
先日の報道によると、日立製作所はIBMをお手本に総額2300億円を削減したという。主に間接費(出張旅費、賃貸料、電気料金等)を聖域なく削減していった結果のようだ。とくに大企業になればなるほど関係会社も膨大になってくる。それぞれが仕様をさまざまにし、ばらばらの契約体系をとっている。同じ調達品であっても、グループ会社によって異なる仕様、違う価格、違う条件で買っているのが当然だ。
その状況で統一基準を定め、調達活動(あるいは間接費の支出)を実施したとしたら、それは大きな効果になるだろう。まとめることによる交渉も容易になる。私はIBMのこの手法が別に新しいものだとは思わない。ただし、肝要は「徹底すること」にある。支出管理を徹底しグループ会社内で同一調達基準を浸透させることができれば、それは価値があることだろう。
ところで、私が常々このような報道に接して矛盾と感じることがある。現在の日本では「他社類似商品を大量生産する」モデルを目指していない。それは建前かもしれないけれど、「他のどこも作れない商品を創る」ことを目指している。これにさほど異論はないだろう。
しかし、日本企業はコスト削減のために、調達品については「同一品」を要求しているのだ。これは面白い矛盾であるように、私には感じられる。つまり、「自社商品はオリジナル」であるが、「外部調達品は凡庸なものを」ということである。おそらく、他社と似たようなものを作っている企業は価格競争に巻き込まれている。だから、安く調達することはできるだろう。
私の興味はその先にある。
他社と同じような凡庸な調達品を元に、ほんとうにオリジナルなものができるのだろうか、ということだ。もちろん「できる。組み合わせにオリジナリティがあるのだ」という返答があろう。その通りだ。凡庸なものであっても、いかに組み合わせるかにオリジナリティが滲む。
しかし、とも思うのだ。それができるところは良い。ただ、それこそ発想が「凡庸」なところは、完成品も凡庸なものになるのではないか。「単一品」「同一品」「汎用品」……これらを調達しようとし続けている日本企業の、完成品のオリジナリティは消えないのか。
私は日立製作所が凡庸な商品しか生み出せなくなるといっているわけではない。むしろその逆に、日立製作所を応援している立場である。むしろ、この流れが加速した時の日本全体への影響について危惧している。いや、危惧よりもそれは、「懸念」といったほうが良いかもしれない。
私が考えていることはそのようなことだ。