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インド調達の運と将来
むかしむかしあるところに、一人のおとこがいました。おとこは仕事をするきもなかったので、世界じゅうをとびまわっていました。もちろん、おかねはありませんでした。
あるとき、インドというところにたどりつき、そのまますみついてしまいました。そのインドというくには、全世界じゅうからさまざまなりょこうしゃが集まって、だらだらとせいかつすることができたからです。
でもほんとうにお金がありません。おとこは、とまっていたちかくのお店でおてつだいをして、それでしょくじをもらうことでなんとか生活していました。
すると、あるときからおとこはおもしろいことにきづきました。インドにすんで5年くらいたつと、いがいにたくさんの「びじねすまん」とよばれる人たちがふえてきたのです。にっぽんじんや、アメリカ人もたくさんいました。かれらは、はじめてきたインドのえいせいじょうきょうに「うひゃあ」とおどろいていました。しかもかれらは、インドにふなれで、どのようにびじねすをやったらいいのかわかりませんでした。
そこでおとこは、じもとのインド人たちといっしょになって、にっぽんやアメリカからきた「びじねすまん」たちに、さまざまなインドきぎょうをしょうかいする店をはじめました。
インドといっても広いので、にっぽんじんやアメリカ人のすくなくない割合は、そのおとこにたよりはじめました。もちろん、おとこも、そのしょうかいびじねすをつうじて、いんどのかいしゃにくわしくなりました。
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これはインドにおける部品商社の物語である。しかも、これは実話だ。放浪と放蕩のすえにたどり着いたインド。そのとき、男にとっては単なる旅行者の楽園だったかもしれない。しかしインドがビジネスの大いなる拠点となった瞬間に、男のインド人脈や経験が、思わぬ「商売のタネ」になったというわけだ。
現在、日本やアメリカの各企業がインドの専門家を求めている。インドでどのようにビジネスを展開したら良いのか。また、どのようなサプライヤーがいるのか。これを知っていることは、まさに金になる「知」だろう。
しかし、私はここに、やはり一つの大きな「運」というものを感じずにはいられない。男がインドでビジネスを開始でき、それを成功させたのも「運である」としか思えないのだ。インドではなく、違う国が勃興していたら、男は単なる放浪人で終わっていた。しかし、インド市場がこれだけ成立したところに、男を上昇させる機会が生じた。
現在、インド調達がブームだという。これまでインドに造詣が深かった人たちの価値があがっている。しかし、それも「なぜかインドに興味があった」という点で、その価値の上昇は偶然であるともいえる。
私はこれを否定したいわけではない。単に人の価値が上がることや下がることは、運の要素が高いということを言ったにすぎない。
しかし、そうか――。とも思う。
人の人生とはさまざまな偶然に身をゆだねることなのだな、と。