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LCC実現の可能性はありや
先日、「エア・アジア」の日本参入が報じられた。羽田からクアラルンプールまでの航路を5000円にするというものだった。春秋航空も同様に、茨木(成田)―上海便を4000円にするという発表をしたばかりだ。
かつてLCCといえば、ローコストカントリーを指し示す言葉だった。どちらかといえば、製造業を中心とした、労働力安価な国々を指した。それが、LCCはローコストキャリを指し示すようになり、安価な航空会社の意味を強めている。
さて、このLCCの黒船到来に対抗するために、ANAも格安航空券市場に参入検討することが同じく報じられていた。考えてみれば、同業他社が格安運賃でシェアを伸ばそうとしているなか黙っているはずはない。価格ならば価格で対応を、と息巻いている。
本来は他社が激安価格で参入してこようとも、それに追従する必要は必ずしもない。ただしそのときには、次の三つの条件が揃っていることが重要だ。
1. 他社にはない圧倒的なブランド力
2. 他社にはない圧倒的な技術的・利便的・品質的(サービスの)優位性
3. 他社にはない政治的優位性
日本的企業は3において優位性を発揮することが多かった。ようするに保護貿易下における利益の最大化戦略を実践してきた。これは皮肉ではない。実際に、たとえば航空会社でいえば、かつては海外のキャリアが新規参入することは日本では猖獗をきわめた。まさに政治的な要因によって日本キャリアの優位性が保たれていた側面がある。
ただし、その3なきいま、各社とも1と2をアピールできなければ格安戦争に巻き込まれる。
ちなみに、私はANAのサービスは優れていると思う。ほぼすべての点において世界各地で乗ってきた航空会社よりも優っている。さて、そのANAがLCC並みの価格で勝負できるか。
これはANAの問題ではなく、日本企業全体の問題として申し上げるのであれば、おそらく日本企業がLCC並みの価格を実現しようとすると真っ先に課題となるのは労使問題だろう。安価なサービスを提供しようとすると、労働時間や手当など、労使に関わる問題をクリアしていく必要がある。それはこれまで日本が先送りにしてきた問題でもある。
LCCに対抗できるか。それは外的課題ではなく、内的課題である。