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下請法の異常な愛情
原理主義なるものがある。原理原則を徹底し、そこから少しでも外れるものは罰する、批判する。この原理主義自体はかなり難あるものだけれど、間然できない魅力すらも兼ね備えている。
先日、中小企業庁が下請取引の適正化について発表した。下請法についての説明は省こう。ただ、結果としては「違反のおそれの高い632社に対して立入検査等を実施しました。立入検査の結果、608社に対して違反事項に関する書面による改善指導を行うとともに、改善指導を行った親事業者のうち、155社に対して、減額した下請代金の返還及び支払遅延に係る遅延利息の支払(合計額約192百万円)を行わせました」とのことである。
この下請法の、原理主義的なる、法への愛情は強調しすぎることはない。632社に対して、608社への指導である。「たったそれくらいの違反を罰するのか」という事例もあるに違いない。9割以上が「グレー」ではなく「クロ」と判断された、その改善割合はたしかに原理主義的である。
私は中小企業庁や公正取引委員会を「厳しすぎる」とか「法律主義すぎる」と批判したいわけではない。それは原理主義者なるものたちの行動としては当然であり、恣意的判断をなさない組織でこそ守れる秩序というものがあるのだろう。それを私は信じている。
原理主義者たちにいかに対応するのか。それは、より原理主義者になることしか答えはない。それは具体的にいえば、各社が再度下請法の教育を部員に徹底することであり、「ここまではOK」という恣意的な判断をなさず、「怪しげなものは指導する」という内部監査を徹底することだ。
ああ、こんな結論はつまらない。
しかし、「違反のおそれの高い」が結局は「おそれ」ではなく「クロ」であった以上、厳格主義を貫徹するしかない。
下請法においては、「あやしげなもの」はすべて「クロ」なのである。