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終りなきコスト削減競争
いすゞ自動車は決算会見で、新興国向け新型車について目標を発表した。いま、先進国で発売している自動車に対して、「価格で2割、コストで3割」をそれぞれ引き下げるという。
ここで、あくまでも概算であるけれど、試算してみよう。
100万円のクルマがあるとして、外部調達費(あくまで調達品としよう)が70万円だ。粗利益は30万円だ。もちろん、直接製造原価のうち労務費は加算していない。繰り返しだが、これはあくまでそれらを無視した「概算の概算」ではある。ただ、このまま論を進めよう。このクルマを引き下げるとしたら、
100万円×80%=80万円
70万円×70%=49万円
これで粗利益は31万円となる。これでやっと、もとの粗利益が稼げるという計算だ。ほんとうは減価償却費や人件費の価格差異があるんだけれど、そこはご容赦願いたい。
こう見ると、コストを3割下げても、かなり「ぎりぎり」であることがわかる。
売価はすぐに下がるだろう(なぜなら自社で決めることができるから)。ただし、調達品は騅逝かぬことがある(なぜなら他社が決めることだから)。そうなると、調達品コストの上下がそのまま粗利益に直結してしまう。
ここで、「ほらね、調達って大事でしょう」といいたいわけではない。そんなの「今さら」だ。逆に私が申し上げたいのは、「コストで3割」を引き下げたとしてもやっともとの利益を稼げるにすぎないということだ。ここには、より利益が稼げるという結論とは違う世界が拡がっている。
利益は低い。でも、ここしか売るところがない。この世界に私たちは飛び込むのだろうか。それは各企業に答えを求めるしかない。
コストを3割下げることの難解さをよく知っている人間からすると、なかなかそれに頷けない。正直な気持ちね。