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樹脂成形の中国優位はほんとうか
先日の報道によると、日精樹脂工業は来年度、中国での射出成形機生産能力を現在の3倍に引き上げるという。数も600台なのだからかなりの数だ。現地の従業員も増員するらしい。
ここで、やや疑問を感じた。
・日本の生産能力は余剰であり、減価償却費もゼロに近いところはいくらでもあるのではないか
・材料はどこの国で買ってもさほど変わらないのではないか
・加工にかかわるエネルギー調達は中国が優位だが、その比率は多くない
このような疑問から中国で生産することでほんとうにコスト効果があるのか、と思った。もちろん、同社はすぐれた企業だからムダなことはしないだろう。
となると、コスト優位性のあるものは
・金型のコスト
・労務費
の二つで日本生産よりも優位性を保てるということなのだと類推される。
製品の一つあたりにかかる金型のコストは、少量生産であれば多額になる。また、労務費も、段取り替えが多ければかなりの額になる。それを低減することによって対日本生産で優位に立とうとしているのか。
しかし、私はもっと大きな構想があるのではないかと思っている。それは、大袈裟にいえば、コスト差ではなく、生産拠点を日本以外のところにせねばならないという「大義」だ。それはおそらく、円高対策でもあろうし、ものづくりそのものを脱日本化しようとする動きの一端でもあるだろう。また中国にものづくりの本質をトランスファーしようとする想いの結晶でもあるだろう。
コストではなく、より高貴な目的のためになされる中国移管。これは定量的ではないかもしれない。しかし、その可能性は高い。それこそが日本のものづくりのほんとうの危機かもしれない。
そんなことを考えさせる報道だった。