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完成品メーカー以外も海外を目指す
Twitterでも複数名の人がこのニュースに反応していた。新日本製鉄などの鉄鋼大手4社が2013年を目標にして、海外生産能力を現在の2倍にするという。特に、自動車用の鋼板能力のことらしく、年間約1300万トン(!)になるようだ。もともと、輸出型から現地型へと転換を図ってきたが、その動きを加速するのだろう。
ハイテン材などは、日本の鉄鋼大手のものがピカイチだ。それらを現地メーカーに提供する量が拡大していけば、現地メーカー有利になっていくだろう。
このような報道は、記者が各社へヒアリングをして、それをまとめて発表する。だから、2013年というのは記者が考える一つの区切りにすぎないし、その生産能力量も必ずしも正確とはいえない。ただ、海外シフトを示す一つの象徴ではあるのだろう。
需要があるところに進出するのは企業の理論からすると当たり前である。それに各社とも、新卒社員を日本人学生だけではなく広くグローバルから集めている。企業体は「カネの臭いに敏感に反応する」というのは当然であって、非難されるべきことではない。
ただ、難しいのは人的な移動だ。アフリカに労働需要があるからといって、アフリカに移住できる人は少ない。とするならば、日本には産業がなくなり、日本人労働者のみが残ることになる。
多くの産業が国外へ逃亡している。浅田彰さんは「逃げろや、逃げろ」と名作『逃走論』で書いた。それはシステムや、閉塞感のある社会構造からの逃亡であった。しかし、ポストモダンが逃亡と叫ぶときに、逃げるべき元の居場所すらなくなったら、私たちはどうすれば良いのだろう。
繰り返す。企業は需要があるところに動いていく。しかし、人はたやすく動けない。
この資本主義社会において、産業逃亡は遠い日の花火ではない。
個人にとっては、いまそこにある危機なのである。