アジアシフトはほんとうか

アジアシフトはほんとうか

先日より、各社の決算を見ていると、二つの文言にでくわす。「海外での販売が好調」「経費削減で利益増」の二つだ。あれ、ついさっきまでは為替が1ドル=80円であれば、どうやっても利益は出ない、といわれていたはずだ。やっぱり海外への販売が好調ならば利益はあがるのかと不思議だった。

もう一つは、経費削減だ。会社の経費削減の大半は調達・購買品の価格低減だ。残り、25%が人件費抑制(残業カットや派遣さん切り)、25%が出張費削減などで占められる。しかし、それにしてもなお、紙面を賑わせるのはやっぱり「売上増による利益アップ」なのである。

そこで、特に話題になるのは、アジア向けへの販売が好調という記事だ。なるほど、アジアには円建てで輸出しているところが多いから、為替の影響は受けにくい。それに、完成車などは利幅も大きいのだろう。

しかし、ここで一点、指摘しておきたい。アジア向けの商品が利益を稼いでいるのはたしかだ。ただし、年々、利益「額」は縮小し、利益「率」は悪化している。薄利多売を実現させるだけのマスボリュームはある。だから成り立っている。とはいえ、それが今後もずっと続くということではない。

私は統計を見る限り、日本が輸出で稼ぎ続けることができるのは、中間財(チップセラコンやチップ抵抗、ノイズフィルタ関係)のようなものではないかと思っている。この分野であれば、アジア勢はまだまだ模倣できない。そのいっぽうで、完成品は模倣しやすい。つまり、輸出で稼ぎ続けることのできる業界と、稼ぎ続けることの難しい業界があるのではないかということだ。

みなさんが属する業界はどちらだろうか。私は年々利益「額」が減り続けている業界が、アジア任せになっているのをみて、あやうさを感じずにはいられない。

アジアシフトばかりを、手放しで賛賞できないのである。

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