これまでの常識②・・・海外調達すれば安くなると思っている「海外調達は本当に必要か?」

これまでの常識②・・・海外調達すれば安くなると思っている「海外調達は本当に必要か?」

「何もない!!」

信じようとしていたものが、存在しないと分かったとき、誰だって失望します。自己の最後の拠りどころと思っていた神様が、単なる虚像と判明したときのような喪失感。

海外サプライヤーとやりとりをしていたときのことでした。輸入納期があまりに遅れるのです。単なるトランスなのに、何ヶ月もかかります。もちろん、改善の依頼もし、何度も打ち合わせをしたのですが、そのサプライヤーの体質なのか、全く現状を良くしようという気が見られません。ここまで舐めた対応しかしてもらえないのであれば、残るのは、しかるべき処置を粛々と取ることです。私は、前任者から引き継いだばかりでしたので、数日をかけて、履歴書類を見ることにしました。取引先の状況や、契約書、そして担当者とのやりとり。

そこで、気になることがいくつもありました。そのうちの一つは、「なぜこんなに輸入しているものが多いのだろう」ということでした。もちろん、安く買うための手法として輸入を否定したいわけではありません。それにしても、こんなに単純なトランスなのだから、日本のサプライヤーから調達してもあまり価格は変わらないのではないか、という疑問が払拭できません。

私はその素直な質問を前任者に投げかけてみました。しかし、その前任者からは「輸入拡大しないと、安いものは買えない」という答えが返ってくるだけです。しかも、そのサプライヤーと取引契約書はおろか、覚書すらも締結した形跡がないことには驚きました。バイヤーが事前に管理すべき最も重要な書類ではないか。続けて、そのことを問いただしたところ、「まぁ、あちらさんはそういう文化だから」というだけ。意味が分からず混乱している私に対して「あんなにサプライヤーに厳しい契約なんて、結んでくれるのは日本のサプライヤーだけだよ」と言い放ちました。

私は、呆れつつも、「そんなの文化の違いじゃないですよ、あなたが仕事をしていなかっただけですよ」と、つい20歳ほども年齢の違うバイヤーに申し上げるほかなかったのです。

何かことあるごとに「輸入を拡大しましょう!」と叫ぶだけのバイヤーが増えています。それらは、「メリットがある、ということはリスクもある」という当然の認識がないままの発言がほとんどです。LCC(Low Cost Country)という言葉も流行化してきましたが、その本当の意義を考えている人はほとんどいません。「海外から買えば安くなる」という単純な図式だけで語られることがほとんどです。「輸入!輸入!」とそれを自己目的化して語るバイヤーは、自己の英語力を自慢したい(くせに実はたいしたことがない)か、あるいは出張で海外行きを狙ってマイレージを貯めたいか、のどちらかである可能性が半分を超えるでしょう。だから、輸入しているという事実だけで満足してしまい、そのことに本当にどれだけのメリットがあるかを計測していなかったり、契約書を交わさずとも止むなし、と勝手に判断してしまったりなどということが起きてしまいます。

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