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調達・購買2.0へ「寂しい時代・製造業・バイヤー」
朝起きれば、テレビから次々に流される新商品のコマーシャル。インターネットにアクセスしてみれば、一人一人の嗜好を見透かしたパーソナライズド広告の波。帰宅すれば、ダイレクトメールの山。モノを買いたいと思えば、以前は何百万円もした機能のコンピュータが数万円で買える。かつてなら月々数十万円が必要だったところ、わずか数千円で世界中の情報が一手に集まってしまう。
それなのに、なぜだか満たされない思い。何もかもが簡単に手に入り、それでいてなぜか虚無感が支配している時代。以前を思い出せば格段に生活の便利さが向上し、刺激的なことに触れる機会も増えてきた。しかしそれでもなお、なぜか残る孤独感、疎外感。月曜から金曜までは「早く週末が来ないかな」と言ったかと思えば、土日には「やることがなくて退屈だ」と矛盾も感じずに思えてしまう。
何もかもがあって、何もかもがない時代。
これまでなら、「自分しか持っていないモノや情報」さえあれば、自己のアイデンティティを確立できました。しかし、もはやカネで買えるものは他者との差異化記号としてはもはや成り立ちません。
そう、私たちは「寂しい時代」そして「退屈な時代」に生きています。
「寂しい時代」の消費者は何も欲しがっていないことを知りながら、「退屈な時代」の消費者に商品を与え続けるべく、製造業は常に新しいことを「安く・早く」提供することだけを争ってきました。そして、効率化を求めた結果、企業は週休一日が週休二日となり、もう週休三日にも近づいています。効率化の果てには、過剰生産の時代が到来し、それを回避するためには労働者を休ませるしかなかったからです。
その時代におけるバイヤー像とは一体どのようなものでしょうか。それは、「寂しい時代」そして「退屈な時代」の調達・購買の新たな役割を問いかけることに他なりません。そして、その問いは激変のただ中にあって全てのバイヤーに突きつけられている問いでもあるのです。
これから、全世界的に余剰時間が増してきます。「ほしいものが、ほしいわ」と言っても、その「ほしいもの」が分からない時代。そのとき製造業に重要になってくるのは、消費者の「暇をつぶせる商品」を提供することです。寂しく、退屈で、そのくせ何を望んでいるのかということすら分からなくなった私たち。何でもいいので、今の寂しさと退屈さを解消させてくれる商品。それは、非生産的なものかもしれない。不要なものかもしれない。刹那的なものかもしれない。でも、少なくとも、まさに「今」に生きている私たちに必要なもの。私たちが「ほしいもの」はそんな商品なのです。
「暇をつぶせる商品」が求められている、と時代を定義してみれば、多くの商品のヒット要因が分かります。あれもこれも、全ては「寂しい時代」と「退屈な時代」が生み出した必然ではなかったか。
製造業はこの流れに追従することになるでしょう。そして、バイヤーはこの流れにそった製品を調達することになります。それは、効率化という観点や、コストや品質や納期といった常識的な軸を一歩乗り越え、市場という迷路の中から新たな製品を探す営みに果敢に挑戦するということなのです。