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1-(8) 調達契約と実行「ソーシングとパーチェシング」
私が思うに、ソーシングとパーチェシングのバイヤーを分けている場合と、同一バイヤーがやるときのメリットとデメリットは次の通りです。
【ソーシングとパーチェシングのバイヤーが分かれている場合】
(1) 各専門領域に特化できる
(2) 納期交渉時のマイナス材料が、価格交渉時に影響されにくい
(3) 調達・購買の全体像が見えにくい
(4) パーチェシングを担当するバイヤーのモチベーションが下がりやすい
(1)(2)がメリット、(3)(4)がデメリットです。(3)は(1)の逆を言っているにすぎません。しかし、あえて書いたのはソーシングプロセスだけを担当し続けてきたバイヤーの中には自分の企業の支払い条件すら知らない人もいるからです。価格を決定したり交渉したりすることに長けていたとしても、実際の発注・検収業務を知らないというのは考えてみれば恐ろしいことです。
(4)は毎日納期の調整ばかりしているゆえです。納期調整業務とは「納入されて当たり前」、「納入されなければバイヤーの責任だ」とされがちで、どうしても減点評価しかしてもらえません。
【同一バイヤーがソーシングとパーチェシングを行う場合】
(1) 調達・購買の全体が経験できる
(2) 全てのプロセスを担当せねばならないため、一つ一つが浅くなりがち
これも、(1)(2)は逆を述べています。私は一から十まで全て自分がやらねばならない(つまりソーシングからパーチェシングまで行わねばならない)立場にいました。非常に大変で、浅くなってしまった感は否めませんが、勉強になったことは確かです。
結局のところ、ソーシングだけに関わりたいのか、パーチェシングだけに関わりたいのか、両方に関わりたいのか、ということは各バイヤーがキャリア戦略として考えてゆくしかありません。それは、バイヤー個人としてどう生きていくかの話だからです。
ただ、やや矛盾するようですが、私がこれまで会ってきたバイヤーの中で優秀な人は、例外なくソーシングもパーチェシングも行っていた人でした。「納期は早めなければいけない。同時にコストも抑えなければいけない」。おそらく、このようなどうしようもなく不遇で矛盾した状況の中で自己を鍛えてきたためでしょう。
また面白いことに、あれだけ「納期調整は大変だ」「ツラい」といっていたバイヤーたちが、実際にコストだけを管理するようになるとします。しばらく経つと、必ず「モノを追いかけていた方が面白かったなぁ」と言うのですよね。
「納入なんて止めてやる」なんてことを言われながら、現場で汗をかきながら交渉していた日々。汗だくになって現場を走った日々。そういうものに正面からぶつかりたい、どうしようもなく直接性を持つ業務がバイヤーにはどこまでも必要なのです。本当は。