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3-(5) ベンチマーク「私の経験」
「ウチの品質基準は厳しいから」
ベンチマークを設定し、比較しようという試みは特別なことではありません。どこの企業でも、設計者であれば実施していることです。携帯電話メーカーであれば他社の製品を分解したり、テレビメーカーでも他社のテレビを分解したりしています。
しかし、このベンチマーク比較をしようとすると常に一種のむなしさがつきまといます。「あっ他社ってこんなに簡略化しているんだ」とか「こんな安いサプライヤー(だけど品質は劣る)を使っているんだ」とかいう発見はたくさんあるのですが、社内の誰かは常に同じことを言うからです。
「ウチの品質基準は厳しいから」
なるほど他社がそのようなコスト低減手法を採用していることは分かった、だけど「ウチではそんな仕様簡略化はできない」「ウチではそんな品質レベルを受け入れられない」というわけです。
これまで「ウチの品質基準は厳しい」と言っている人しか見たことがありません。どんな企業の設計者・バイヤーと話してもそう言います。だから、おそらくどこの企業でも、自社が世界で最も品質基準が厳しいと思っているのでしょう。
私が最も困ったのも、この「ウチでは無理」症候群の人たちでした。自社を特別と思うことは自尊心の裏返しなので決して悪いことではありませんが、そのような思い込みを持っていれば突破口を開くことができるはずはありません。