7-(3) 営業マンの立場を理解する「私の経験」

7-(3) 営業マンの立場を理解する「私の経験」

「いや・・・もう勘弁してくださいよ」

性格からでしょうか。私は営業マンを理詰めにしてしまい、もう逃げ場すらなくさせてしまうような状況を作りがちでした。

通常の他愛無い会話でしたら、私は執拗に責めることなどまずありません。むしろ必要以上に礼儀正しくするのが務めだと信じています。しかし、自責を認めず、言い訳をしようとする営業マンに対しては、少しでも理論の綻びを見て取れたら必ずその矛盾点を突きます。

相手が素直に謝るのであれば、それ以上は絶対にしないのですが、さらに言い訳をしようとするならば、その非を認めるまでやります。私には間違いを犯したときは誠実に謝るべきであるという信念があり、他者に対しても同等の要求をしていたからです。

しかし、相手の反論を許さないことはときとして事態の悪化を隠蔽させることにつながりました。

一例では、「この日に納入します」と言われていたものが納入されない。しかも営業マンに電話したら失踪していた、などということが起きました。製品はオプトデバイスで、サプライヤーの台湾工場で生産しているものでした。営業マンの携帯電話に何度もアクセスし、やっと会話できたとき、次のようなやり取りをしました。

「すみません。本日納入は無理でした。しかし、現地を本日出荷したようでして、明日にはウチに100個届くと思います」「それ本当ですか?安心してよいのですね?」「そうですね…」「そちらに到着したとしたら、こちらに届けられるのはいつですか?」「ちょっと・・・どうだろう?調べないと分かりません」「本当に今日送ったんですか?私がAWB(注:航空貨物運送状)から到着時間を調べますので教えて下さい」「うーん。ちょっと分からないんですよ」「送り状を調べるだけでしょう。教えてください」「いや、だから、すぐには分からないんですよ」

私は中国語を話せませんが、英語であれば多少話せるので、直接台湾の工場に電話しました。そして、台湾の工場の担当者とこういう話をしました。

「あの製品って、どの便で出荷されました?」「いや・・・。そもそも出せてないですよ。日本の営業にはその希望納期に納入することは不可能だと何度も申し上げているのですが。お聞きになっていないのでしょうか?」。私はしばし絶句しました。

すると、すぐに営業マンから電話がかかってきました。

「なんでもお電話なさったそうで」「はい」「わたくしどもが嘘をついていると思われたでしょうね」「はい」「いや、どうしても納期に間に合わせたいと思いまして。その気持ちの表れだったんです。もう納入日を決めてしまって、そこからスタートしよう、と。御社にご迷惑お掛けしないように、と」「そのために嘘をついた、と」「それくらい、どうしても遅れることができないと分かっていましたので」

私は約5分間言葉を失ってしまいました。

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