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7-(8) 下請法を遵守した健全な関係作り「私の経験」
「何の不正もしていませんよ」
普段、できる限り無礼なことや失礼なことがないように意識している私にとって、脱法の疑いがあると指名されたときは耳を疑いました。下請法の内部監査で、唯一私の事例だけが槍玉に上がったのです。
監査で指摘されたら、取引先と書類を偽造することが日常茶飯事となっている企業もあります。議事録が存在しないとなれば、取引先を呼んで押印の日付を変えて作成する。見積りがおかしいとなれば、取引先に再度見積りを作り直してもらう。こういうことはどの教科書にもでてきませんが、少なからぬ企業でもやっていることです。しかし、私はそのような行為を疑われることもなかったので、堂々と正当性を立証することにしました。
そのときの事例はこのようなことです。私がある製品の見積りを下請け事業者(サプライヤー)から入手し、発注、その後納入してもらいました。そのとき、見積り査定を実施していたのですが、発注後になってサプライヤーから「見積りに不備があった」と言われ、確認して分かったことは「これまで10円程度だったボルトが50円で計上されている」ことです。
この製品は8千円程度の組み立て部品であり、大量購入しているわけでもなく、差額の40円などなんら大勢に影響しません。別にサプライヤーも黙っていてもよかったわけですが、これまでの関係で正直に言ってくれたわけです。あくまで「10円程度」であって、購入履歴もなかったので、そのままにしておいてもよかったのですが、私は40円を差し引いて注文書の書き換えを行いました。
これが「下請代金の減額の禁止」に抵触すると言われました。一旦取り交わされた契約を実行することが当然で、それを減じると下請事業者の利益を損なうことになるというわけです。私は反論を試みました。「なにやら、こちらが強制的に減額したように感じられるが、そうではない。単に協議で決定したまでだ」という内容を伝えようとしたところ、当時の上司は一言「やめろ」と静かに語りました。結果は、私の下請法の理解不足による手違い、ということになったのです。すぐさまサプライヤーに40円を加算して再度注文書を書き換えました。私は処分されることもなく終わりました。