8-(3) 世界からモノを調達する「私の経験」

8-(3) 世界からモノを調達する「私の経験」

   「そんなに金がないなら、安ホテル紹介するよ」

私はそのとき香港の会議室にいました。私の目の前にいるのは、光ケーブルを生産しているサプライヤーの社長でした。

私は、自社製品のルーターに付属させることになった光ケーブルの交渉を実施していたのです。「どうにかして、目標コストにしなければいけない。交渉を成功させて、日本に戻り上司に報告せねばならない」。そう思っていた私は焦っていました。

しかし、この香港企業の社長は、全く理解できないでいました。なぜ、競合で勝ったコストを、これより下げねばならないのか、と。なぜバイヤーの「予算が少なくなった」などという意味不明な理由でコストを下げねばならないのか、と。

日本企業では、一度合意に至ったコストであっても社内の予算がなくなったりすると、「サプライヤーに一律5%安くするように頼んでくれ」という指令が下るときがあります。今では多少改善したようですが、そのときはそのような仕事ばかりでした。バイヤーである私自身も納得できないことです。しかし、そのとき私はその意味不明な要求をサプライヤーに呑ませなければいけない立場にいました。

私はつい言ってしまいました。「このコストにしてもらわないと日本に帰れません」

すると、社長は冷静に言うのでした。

「そんなにお金に困っているのですか。それだったら本日は安いホテルを私が紹介しますよ」と。

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