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8-(7) 上流への介入「私の経験」
「なぜこんなところに発注しているんですか?」
私がバイヤーになったときに、業務の引継ぎを受けていたときのことです。私は、そもそもなんでこんなにたくさんのサプライヤーが取引先として存在しているのかが分かりませんでした。
同じ半導体商社なのに、なぜ5社も存在しているのか?そして、そもそも商社を使わないといけない理由は何か?こういうことが全く分かりませんでした。だから、私は引継ぎ元の先輩バイヤーに訊ねるしかありませんでした。「なぜここに発注する理由があるのですか?」と。
運悪く、私の質問自体が理解されていないようでした。「そりゃ、これを調達する必要があるからだろ」と当然のように(いや、当然なのです)、答えられるだけでした。私が知りたかったのは、「A社に発注する」というとき、そのA社でなければいけない理由はどれだけ必要で、どれだけ考えられているのか、ということでした。
こういう率直な質問をし続けていると、困って何も答えられない先輩バイヤーたちの姿をたくさん見てゆくことになります。
・ 「大企業だから」(そのことと、そのサプライヤーのQCDが優れていることにどういう関係があるのだろう?)
・ 「よく言うことを聞いてくれるから」(そりゃ単にこちらがミスばかりで、尻拭いしてくれているだけではないのか?)
・ 「業界シェアが高いから」(シェアが高くても、どうしようもないサービスしか提供できないサプライヤーはたくさんいるのでは?)
・ 「いつも営業マンが訪問してくれる」(そんなに呼びつけるなよ)
・ 「困ったとき助けてくれた」(その1回のために何億円も発注し続けるのか?)
などなど。枚挙に暇がありません。
あるコンサルタントと話していると、「日本の製造業のバイヤーさんは、実績や社会的評価がないと、どんなに良いサプライヤーでも見向きもしてくれない」と言われました。確かにそうです。どうしても保守的な思想が離れないからです。初めてのサプライヤーには責任問題がつきまとうため、誰もやりたがりません。
私は、「はじめての」サプライヤーに何度も大型案件の発注を決めたことがあります。それはどういう定量的な評価軸を持ってしても既存のサプライヤーよりも優れていたからです。「そんなことすると、いつか支障があるぞ」と何度も言われました。しかし、その支障というものが一体何なのか考えてきたのですが、分からないままです。年始に、既存サプライヤーから年賀状が届かなくなったくらいですが、それにしても紙代のことを考えればない方がいいでしょう。