「一番大事にしなければいけないもの」とは、人の命である。かつてこの国の指導者は、理不尽な犯罪行為によって捕らえられた人質解放の代償に、超法規的処置として犯罪者グループの捉えられていた同志を釈放している。「人の命は地球より重い」との言葉と共に、である。

そして、そんな価値観も正反対になる瞬間がある。一国や集団の指導者によっておこなわれる戦争だ。世界のいろいろな場所で耐えることのない戦火の嵐は、まさに価値観の一大変革と言って良い。それも一般論で「賢い」とされる指導者が、価値観を180度変えるのだ。かつて、この国の指導者も戦争を推進し、国土は焦土と化した。ここで戦争の是非を論じはしないが、少なくとも人の命を奪うことが良しとされた時代が、この国にもほんの数十年前に存在し、世界には今でも人の命を奪うための活動が、現在進行形でおこなわれているのである。

そんな過去を持つ社会に、毎年数十万人が新社会人としてのスタートを切る。そのスタートを切った瞬間にも、新社会人が所属する組織に一大変革が起きる。それまで学校というお金を支払って所属していた組織から、企業という、生きていくための糧=お金を得る為の組織への所属に変わる。この所属目的が180度変わる事で、いろいろ厄介なことが起こる。例えば、上司・先輩社員から指導され、時に怒られたりするのである。新社会人にとって待ち受ける先輩達はその何十倍もの人数だから、多勢に無勢だ。しかし、である。ぜひとも、これまでの経験を糧とした、あたり前の口調でビジネスを語る先輩・上司の発言の疑ってほしいのだ。直属の上司や、先輩は、新入社員との関係では立派な指導者だ。しかし、歴史は指導者が正しくなかった時があることを証明している。疑って欲しいというよりも、疑うべきなのだ。

疑う……、別に最初から先輩・上司に楯突くことではない。経験の浅い人間が経験豊富な人間の物言いに疑問を持つためには、周到な準備が必要である。武器の一つは知識だ。今は幸いにもインターネットという、とても安価に情報を入手するにはもってこいのツールがある。新入社員が会社に入った瞬間は、職場で、歓迎会で、公式、非公式にいろいろな訓辞を聞くことが人生で一番多いだろう。ここでいう「疑う」アクションの第一歩は、言われたことをメモすることだ。聞いた話に価値があるかどうか、聞いた瞬間にはわからない。だから、メモすることは、なにもかも、あれもこれも、である。そして、聞いた内容の理解を深めるために、内容の真偽を確かめてほしいのだ。インターネット上の膨大な情報を自分の脳の記憶領域の一部として利用する。疑問に思ったこと、分からなかった事を調べ尽すのである。

調べ尽しても尚、理解できない場合、その時は発言の主に質問してみる。その際に重要なのは、教えていただく時間の確保を上司・先輩してもらっていること決して忘れないこと。教えることで相手の時間を使わせている、この事実を決して忘れてはならない。少なくともその時間は、相手の仕事の邪魔をしているとの気持ち、だからこそ自分が正しい知識を得ることで、上司・先輩が費やした時間を生かそうという気持ちが重要なのである。これは、わからない知識を調べ、人に聞いて理解することよりも、人としての他人への配慮という点で、長い社会人生活の中でより重要なのである。

私が新入社員にとって一番厄介と思っているもの・・・・・・それは、上司・先輩が上位者の過去に経験した成功経験の、時空を超えた現在への無条件適用である。

「俺がバイヤーの頃は・・・」

「昔はちゃんと目を配っていたのに、今はなんでできないんだ?!」

そんなことを先陣切って言う人たちは、現時点では1990年代に現役バイヤーとして大活躍していた人たちだ。確かに過去の実績を見れば、素晴らしい成果を挙げているかもしれない。過去の業績に対しては敬意を表すべきであるが、無条件に当時と今を比較して、今を憂う……というのは短絡的すぎるのだ。当時の経済環境と今のそれを比べてみればわかるであろう。新興工業国の経済発展や、資源ナショナリズムの進展による原材料価格の高騰、そんな経済環境の変化を起点にした調達環境は、当時と異なる事象を数えはじめればきりがない。もし、ほんとうに過去にできていたことができなくなったのであれば、その理由を探るのは上司、先輩の役割であって、昨日今日会社に入った将来を嘱望される新人ではない。

今、我々は大きな変化の真っ只中にあって、優秀だった人でも、今現在の問題に対して解決策を導けるかは未知数。その位、ちょっと昔と今は違うのである。今、会社組織の中枢にいる人達が新入社員だった頃にパソコンもインターネットも無かった。昔、多くの時間を費やし、苦労して作った資料や、データ、情報は、あるレベルまではパソコンとインターネットで、時間と労力を使わずに入手することが可能だ。要はその先である。

変化の激しさ、そのスピード感からすれば、過去の成功体験だけでは乗り切れない。伝統的に受け継がれているセオリーだけでもダメ!現状認識を正しく行い、過去の経験やセオリーを踏まえ、今時代に即して何をすべきかを自ら考える事がとても重要なのである。新入社員にとって、その考える為のヒントが、上司・先輩の発言に詰まっている。いきなり無の状態から何事かを考えはじめるのは難しい。従い、ともすると聞き流してしまうような人の発言の中に、そのきっかけを求めるのだ。

そしてもう一つ、過去の成功体験を語る人の中には、その体験を重要視する余りに、今起こっていることに盲目的になることがある。資料を見ても、目に入らない。話を聞いても「そんなことあり得ない」といった思いで、理解そのものをおこなわない。そんな先輩・上司の目を見開かせ、今を正しく理解させるのは、真摯さと謙虚さを伴った新人からの柔らかい指摘が一番効果的だ。新入社員とはいえ、そんな重要な役割を入社した瞬間から担っていることを忘れてはならない。


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