先日、また違うテレビ番組の打ち合わせに行ってきました。4月放送の新番組で、私がさまざまな業界のコスト構造について説明するようなのですよ。その番組には勝間和代さん、森永卓郎さんや金子哲雄さんたちが出るようですが(といっても、これらの人たちはまだ未定)、その中で私は家電量販店で「値切りのコツ」を実演してくれ、といわれました。凄いですよね、「値切りのコツ」などというものがあるのでしょうか。でも、おそらく世間一般に「バイヤー」といえば、「モノを徹底的に安くする人たち」というイメージなのでしょうね。謹んで実演しました。場所は、某家電量販店です。たしか表示金額から2割が下がり、かつ競合他店の交渉結果を伝えたところ、もう数千円下がりました。F社のノートパソコンです。「おお、こんな簡単に価格交渉ができるのですね」と驚いてくれましたが、バイヤー職のみなさんにとっても「簡単」でしょうか。モノを安くするなど、これまでも繰り返し説明してきたように、三つしかありません。そもそも安いものを買う購入条件を変える交渉するこの三つです。そもそも定価20万円のものよりも、定価5万円のものを購入した方が良く(1)、まとめ買いなどで割引してもらえ(2)、さらに競合他店の状況などを使って値下げできないか問うてみる(3)。これだけなのですよね。でも、ほとんどの人は交渉というものができないというのです。8割の人たちは、値札に貼ってある価格通りに財布を開くといいます。だから、交渉できる人にとっては「言ったもん勝ち」という状況が続いているのです。これはバイヤー職というものの利点とでもいうべきものでしょうか。そこに、一つ経済状況の理解というものを加えてみましょう。そもそも安いものを買う購入条件を変える交渉する経済状況の理解日本には9000万台のテレビがあると言われました。凄いですよね。ほとんどの国民が持っている計算になります。そこで、地デジ対応テレビの導入が叫ばれた2006年末には、普及台数がたったの2000万台だったのです。このときに、地デジ対応テレビの市況がさかんになったのもわかりますよね。だって、マーケットが7000万台という莫大な数だったわけです。これをビジネスチャンスと考えるな、というほうがムリでしょう。さて、その後、今月2010年3月の発表によると、その普及台数がなんと一気に6800万台にまで伸びたといいます。かなり怪しい数字ではあるものの、ここは信じておきましょう。つまり、7000万台もの市場があったところ、今では2200万台の市場しか残されていないというわけです。家電量販店は、その残り2200万台をいかに奪取するかを考えざるを得ません。テレビは新商品の発売時期が春と秋と言われています。通常は秋をこして年明け(みんながお金を正月に使い果たしてしまったとき)に、最も安くなるのです。市場が飽和して、しかも春前のこの時期(まさに今のことです)が底値ではないか。そう仮説を立ててテレビの市場価格を調べてもらったところ、見事に的中しました。なんと、2月と3月が最安値だったのです。「やっぱりな」と思いました。経済状況を少しでも把握していれば価格交渉を有利に運ぶことができる。それが実証された瞬間でもありました。ただ、これを一般人の方々に説明するのはけっこうしんどい。おそらくこのメルマガの読者はほとんどが読書家で勉強家でしょう。だから、みなさんに説明するのはたやすい。でも、一般の方々に「市況予測」とか「需要と供給」「経済状況」などを説明することはやっかいなものです。私だって「サンクコスト固定費」とか「限界利益」とかの用語を使って家電量販店の価格推移を説明することはできます。でも、それでは多くの人に届かないのです。これは私の次の挑戦にもなるでしょう。読者のみなさまのように、「モノを買う」ということに意識を集中し、日々奮闘し、成果をあげている人たちがいる。このことをもっと多くの人たちに知ってもらおうと思うのです。それは無益な試みでしょうか。私にはそうは思いません。もし価格の主導権が「生産者から消費者に移っている」と言われているBtoCの潮流が正しいとすれば、BtoBの世界においても価格の主導権は「生産者からバイヤーに移っている」ということが言えるはずだからです。その先端にいる人たちの営みを伝えることは意味があることだと思います。そして、その先に。多くの人が「買うという行為」にもっと注目してくれたら。それは新たな流通革命につながることは間違いありません。みなさまと社会の革命ができる日を夢見て。 ぜひ、ついでにこちらも見てください!クリックして下さい。(→)無料で役立つ調達・購買教材を提供していますのでご覧ください