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激怒せよ!トヨタ自動車と愛知製鋼ライン爆発問題
トヨタ自動車系列の愛知製鋼・知多工場で爆発事故がありました。同社は特
殊鋼メーカーで、事故はエンジン関連の棒状特殊鋼生産ラインで起き、全体
の7割ていどの生産比率を占めていました。トヨタはJIT生産で知られ、
サプライヤの生産システム不良はただちに完成車生産に影響が出ます。
それでも、いったんは完成車生産を継続できるとトヨタは考えていました。
しかし、前述のとおり、愛知製鋼の生産量の大半を占めるラインでの事故だ
ったため、別ラインでの24時間増産や他社への代替委託の努力も限界があり
ました。また緊急時に備え在庫7万トンを確保していたものの、欠品は避け
られませんでした。
トヨタ自動車は8日から国内生産を一週間ほど止め、影響は10万台にも及ぶ
ようです。
私は「激怒せよ!」と書きました。激怒の矛先は、トヨタでも愛知製鋼でも
ありません。この報じられ方です。いくつかの報道を見ると、阿呆としかい
いようがありません。自動車産業では、大災害や大規模な事故のたびに供給
網の不備が指摘されてきました。今回の事故もまた、製造業サプライチェー
ンの脆弱性を示すものとして取り上げられました。
私は逆に、グループ全体で復旧が迅速になされているとしか思えません。そ
れは……。
愛知製鋼は生産ラインを爆発によって止めてしまいました。それは残念とし
かいいようがありません。それにそんな突発的なことであっても完全に事前
察知せよ、という理想論を振りかざすひとにはなんの反論もありません。
ただ、同業者である大同特殊鋼はただちに「できる限り応援する」と発表し
たのです。そして神戸製鋼所もそれに応じました。そして他メーカーも協力
姿勢を見せています。これはトヨタの日ごろのサプライヤマネジメントの卓
越さを表現してはいないでしょうか。
私もかつて自動車メーカーにいました。そもそも自動車部品は、サプライヤ
とともに、新車の企画構想段階から一緒につくりあげます。そして部品や材
料を認証するのです。だから、部品の開発・製造ノウハウを、自動車メーカ
ーがあらかじめ複数社に渡すのは現実的ではありません。
なんでもマルチソースせよ、という馬鹿丸出しの講師がいますが、あれはや
めたほうがいい。すみません、口が悪かったようです。謹んで、大馬鹿に修
正します。
話を戻します。逆にいえば、緊急時にはそのような障害や垣根を取り払い協
力してくれる環境を創らねばならないのです。トヨタに「土壇場のサプライ
ヤ管理力」があるとすれば、それが発揮されたといえるでしょう。
今回、愛知製鋼から代替メーカーへの特殊鋼製品の生産移管について、手間
取ったかのように語るひとがいますが、信じられません。生産技術や調達に
すこしでも携わっていれば、今回のスピードはむしろ速いとしか思えないか
らです。特殊鋼の簡易なプレス部品であっても、サプライヤ間の生産移管は
微妙なチューニングなどで時間がかかるというのに。
正直に申せば、私は仕事上、トヨタグループではなく、競合他社グループに
近い立場にいます。そのうえでも、トヨタや愛知製鋼の関係者が行っている
努力はただしく評価されるべきだと私は思うのです。
今回の事故については、私は心からトヨタや愛知製鋼を応援したいと思いま
す。