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バイヤーのための英語術(牧野直哉)
先日、このメールマガジンに「夏休み読書案内」を掲載しました。その中でご紹介した本の一冊「英語が社内公用語になっても怖くない グローバルイングリッシュ宣言!」が、他と比べて際だったアクセス数を示していました。後戻りはできないグローバル化の進展によって、英語を業務上使わざるをえないバイヤーが多いということでしょう。同じく御紹介した「世界のグロービッシュ ─1500語で通じる驚異の英語術」も、多くの読者の方がアクセスをされていました。
私が「英語が社内公用語になっても怖くない グローバルイングリッシュ宣言!」を紹介した理由は、英語の本ですが圧倒的に日本語が多いことにあります。我々は日本人で、日本語を母国語としています。英語を学び、使う上での技術論は日本語で学ぶべきです。幸いにしてそのようなテーマの本も多数存在します。そして、そもそもネイティブと同じような英語を使う必要がないことを「世界のグロービッシュ ─1500語で通じる驚異の英語術」でお伝えしたかったのです。そして今日はもう一つ、バイヤーと英語というより、ビジネスパーソンと英語について述べたいと思います。
● もう英語の本を買うのはやめよう
私は日本企業に十数年勤務した後に、米国系のメーカーへ転職しました。文化も言葉も異なる企業への転職。なかでも日本企業と、いわゆる外資系企業で使われる英語の違いには、驚きそして苦労しました。
当然ですけど、はなされる英語のスピードが違います。そして、使われる単語が微妙に違います。最初は戸惑いました。悩みの中で、英語が得意な友人達にある質問をしました。すると、英語ができる、得意にしているすべての友人が、私の質問そのものを否定しました。
私はこう質問したのです。「どんな本で英語を学ぶべきか」と。きっと英語が飛躍的に上達する魔法の文献が存在するに違いない、そう思っていたのです。すると、普段業務上で読まなければならないメールを、辞書を片手に一生懸命読む方が良いとのアドバイスを貰いました。その方が、英語力の向上とビジネス上のパートナーとの相互理解の深化に役立つ。そして何より、普段の業務の中で英語を学ぶことができるのが大きなメリットなのです。
これ、実践するとどうなるか。あたり前ですが、わからないことがわかるようになります。より深く理解できるようになります。そして、メールの返信に「この部分は、こういう意味か?」なんてことが書けるようになります。これがコミュニケーションそのものを深化させる結果に繋がるのです。
● 英会話学校に数十万費やすよりも、月に一万円分の読書を
英語のできる友人へ質問をして、自分のマヌケさを実感している頃、私は数十万を最寄り駅前の英会話学校へ支払った後でもありました。それだけ自分の英語力に自信が持てていなかった証です(笑)。私の英語の実力によって指定されたクラスは、日本人とオーストラリア人の交換留学がテーマの話でした。一回当たり1時間の授業が26回。仕事の都合で出席できないときは、受講日を振り替えたりしながら、なんとか22回出席することができました。しかし、苦労して出席を続けた割に、業務上使う英語に自信が持てたかといえば、そんなことはありません。更に上のクラス受講を勧められましたが、費用対効果を判断して継続しませんでした。
そんな中、私はあるトラブルに巻き込まれます。トラブル処理の過程で、海外サプライヤーの担当者と、日本そして現地で約20日間、昼夜を問わず一緒に過ごすことになりました。もちろん、それまでの私が一番嫌っていた外国人との食事も、当然一緒に取らなければなりません。それは過去には経験したことがないほどに濃密な英語環境でした。
ただ英語に触れている時間が長かった事が、自らの英語能力の向上に役立ったでは面白くありませんね。自分の置かれた状況を分析してみました。単純です。他に誰もいなかったんです。私がコミュニケーションをしなければ、せっかく高い旅費を費やしてやってきてくれた人の時間を無にしてしまうのです。窓口としての責任は私が持っていました。日本人の前で英語を話すのが恥ずかしいなんて言っている暇はありません。いうなれば、追い込まれた訳です。
英会話学校に通っていて、英会話スキルが向上する土壌があったのかもしれません。時の経過とともに、最初は苦痛であったコミュニケーションも、段々と苦痛さの度合いは減ってゆきます。自分の意思が伝わっているとの実感が、さらにコミュニケーションの進化を生んでゆきます。単純に言えば、うれしいんです、自分の言葉が伝わったことがともかく喜びなのです。発言が積極的になる自分を実感する瞬間が、どんどん増えてゆきます。このモチベーションの源泉は、意思疎通ができていると嬉しくて喜んでいるのです。
文化的な背景の異なる相手です。「君はどうだい?」「日本ではどうなの?」といった事を話すことが増えてきます。英語そのものよりも、日本語環境の中での自分の知識が問われる場面です。
● 必要になったらやる
そもそもバイヤーになぜ英語が必要なのでしょうか。海外のサプライヤーや、自社の海外子会社の担当者とのコミュニケーションですね。駅前留学と称される英会話学校、私は費用対効果が高くないと判断するに至っています。日々の業務の他に、わざわざプライベートの時間、そしてコストを費やして通うほどの効果はないと考えています。もちろん、きれいな発音の取得やそのほかの理由で英会話学校へ価値を見出すかたもいらっしゃるでしょう。それよりも日々の仕事の中でメールをしっかり理解することを業務時間の中で行うことのほうが、私に合っていると考えたわけです。英会話学校に数か月で数十万を費やすよりも、私は月に一万円でいいから読書をしたい。日本語で書かれた本でいいんです。そちらのほうが、圧倒的に日本語を使う時間の長い我々にはメリットが大きいはずなのです。一日24時間の限られた時間の中で、英会話学校へ通い、授業を受ける時間をねん出するよりも、業務のメール処理を確実に行うほうが、より実益につながるはずなのです。
私は月に1~2度、東京都内の大手の書店で数時間を過ごします。ビジネス本だけでなく、たとえば学習参考書のコーナーだったり、医療書のコーナーだったりも歩きます。これは実益というよりも趣味です。英会話の本は次から次へと新しい本が登場しています。好評だった英会話の本が、英文法の本を出したり、英単語の本が登場したりといった具合です。私も過去には手に取っていました。しかし最近は全く買わなくなりました。買っても読まないし(笑)、そもそも普段は比較的に必要としていないんです。具体的な目的が伴わない準備は、私にはダメでした。日本人は大学時代までを含めれば10年間英語の勉強をしています。ある程度の素養はあると確信して、あとは必要になったら必死にやる。英語に関しては、そんな取組でもいいのではないかと思うのです。必要ないなら、悩む必要もないと思いませんか。必要になったら逃げずに、自ら飛び込めばいいのです。
もう、普段から日常的に英語のスキルに悩むのはやめませんか。