電子書籍と生き残るための施策(坂口孝則)

電子書籍と生き残るための施策(坂口孝則)

・電子書籍の到来以前の私の取り組み

2009年ごろに電子書籍なるものが話題になりはじめた。そして、2010年には電子書籍が次なるビジネスの中心になるといわれた。市場規模でいえば、かつて2兆円規模といわれた書籍産業だが、昨年は1兆9000億円となった。おそらく2011年は30年前の規模に縮小するだろう。だから、猫も杓子も「これからは紙の本ではなく電子書籍だ」と言い出した。それはほんとうだろうか。

このメールマガジンのほとんどの読者は、熱心な読書家であり(たぶん)、自己の研鑽にも時間を惜しまない(たぶん)人たちだろう。その人たちにとっても電子書籍なるものの正体を語っておくことは意味がある。

私の無料メルマガ「世界一のバイヤーになってみろ!」の読者ならば知っているだろうが、私は実に2006年から電子書籍の販売をはじめた。自作である販売サイトのサーバーを借りた。いま、多数の業者のようにスマートフォン対応の電子書籍ではなかった。自分がワードで原稿を書いたものを、そのままpdfファイルにしたものだった(ただし、私はいまでもpdfファイルが悪いとは思わない。機種によって読めなくなる形式よりも、どんな端末でも読めるpdfファイルは再評価されるべきだ。しかし、本題ではないため、次の機会に譲る)。

そもそも電子書籍を販売しようとしたきっかけを羅列してみると--。

・儲かる商売の条件は「在庫を持たないこと」「利益率が高いこと」「かならずお金を回収できること」であり、電子書籍販売はそれにマッチするように思えた
・もっとも自分の強みを活かすことができる手段は、「書く」ことではないかと思った
・バイヤーは単に「買う」だけであり、自ら「売る」経験をした人はほとんどいないので、自分だけでも試してみたかった
・サプライヤーに「利益が出ていない体質を改善しろ」と指導する以前に、自分自身が利益を出す経験をしてみたかった

などをあげることができる。余談だが、サプライヤーにたいして、特定顧客への売上高依存度を指摘する人がいるが、その指摘している本人は会社のみから給料をもらっており、相当な高リスク体質になっている--ものの、これもまた今回の趣旨ではないために、次回に譲ろう。

無料メルマガ「世界一のバイヤーになってみろ!」は、文字通りタダ。でも、気に入ってくれた人には、有料でpdfファイルを買ってもらおうと考えた。当時、販売していたのは、次のようなものだ。タイトルだけ列記する。

・「非常識なコストダウン戦略」
・「世界一の購買部を作ってみろ!!」
・「7日間コスト削減革命」
・「すごい購買のヒント」
・「凡人バイヤーの逆襲」

pdfファイルで、ものによっては100ページを超えた。これらを、980円~1980円程度で販売していた。

このなかでも、「非常識なコストダウン戦略」は私の処女作「調達力・購買力の基礎を身につける本」のベースとなったし、「世界一の購買部を作ってみろ!!」は内容を一新して商業出版の「だったら、世界一の購買部をつくってみろ!」につながっていった。

2006年だから、電子書籍がブームになるだいぶ前だと記憶している。その当時、電子書籍を販売していたのは、作家ではジャーナリストの日垣隆さんしかいなかった。この点でも、日垣さんの先見性が理解できる。出版構造の変化を予期し、みずから電子書籍販売に乗り出したのだ。

・電子書籍販売の結果は?

ここで小声でいうと(笑)、私の販売実績は年間で107万円だった。サラリーマンの副業、いや、小遣い稼ぎとするならばそれなりだ。よく「月に副業で5万円を目指そう」とする書籍があるものの、えらく簡単だな、と思った記憶がある。当時は販売サーバーを間借りしていたので、7%ほどのマージンが抜かれた。だから、120万円ほどの売上があっただろう。

しかも、pdfだから想像通り原価はかからない。自分が書き上げてしまえば、それ以降は配送費もかからない。ほとんどが儲けになる。

しかし、直感的には「これは儲からない」と思った。107万円がどうだという議論はあるだろう。「簡単だ」しかし、それでもなお、私は「こんなもんか」と感じたのは事実だった。いや、もっと正確にいうとすれば、こういうことだ。

(1)出版社が電子書籍を販売しても、コストに見合ったリターンを得ることは難しいだろう。出版社は、個人でやる場合にはかからないコスト(給料とかその他の固定費)が発生してゆく

(2)個人がやる場合も、お小遣い稼ぎレベルであり、電子書籍で「食う」ためには、さらに工夫が必要だろう

と考えた。したがって、(1)のことを、自分の経験からインタビューなどで語ってきた。有名なところでは、「電子書籍の正体 (別冊宝島) 」には私のインタビューが載っており、固定費と変動費率の計算から、電子書籍幻想を解説している。要するに「出版社が電子書籍を売っても、想像したほどは儲かりませんよ」ということだ。この(1)の考えには、あまり変更はない。

ただし、残念だったのは、私が電子書籍のすべてを否定したように思われたことだ。もちろん、前述の「電子書籍の正体 (別冊宝島) 」は、そもそも電子書籍に反対している宝島社からのものなので、やむをえない(なぜなら、彼らは雑誌「SWEET」などで既存の流通システムを使ったブランド商売をやっているため、流通を介さない電子書籍に味方することができないのだ)。

・生き残るための電子書籍販売

ただ、(2)の可能性はまだあると考えてきた。おそらく、電子書籍や電子コンテンツの販売でじゅうぶんな利益をあげている偉人は、堀江貴文さん、日垣隆さん、佐々木俊尚さん(佐々木さんは、若干、なさっていることに違和感があるが)などだろう。この方々の戦略といえば--。

・実際の書籍から電子コンテンツへの誘導が考えぬかれている
・電子コンテンツの販売サイトが秀逸
・手軽な価格

等々があげられる。これからの「日本人全員給料減」時代を生き抜くためには、やはり(2)の検討が不可欠だ、と思う。そのためには、(2)の模索を続けていかねばならない。

そこで、私は現在、新たな販売サイトを作成することにした。これはみなさまにもご期待いただきたい。そこでは、上記「実際の書籍から電子コンテンツへの誘導」を狙い、「電子コンテンツの販売サイトが秀逸」とまではわからないが購入しやすい工夫をこらし、「手軽な価格」での販売を心がける。

加えて、みなさまに伝えたいのが、「一緒に電子コンテンツを販売しませんか?」ということだ。要するに、私の販売サイトを使ってもらっていい。自分がコンテンツを作成し、それを1,000円でも5,000円でも自由に値付けしてもらってアップロードしておく(もちろん、100円でもいい)。そうすれば、文字通り「お小遣い稼ぎ」から「それだけで食える」レベルにもなるかもしれない。

たとえば--。

・特定業務のノウハウ公開pdf
・特定業務の講演や説明音声ファイル
・バイヤーのためのキャリアアップのノウハウpdf

などなど、もちろん調達・購買・資材に関係していたほうが良いが、それ以外の一般的なものでもかまわない。

・海外調達
・サプライヤーマネジメント
・安価なサプライヤーの探し方
・原材料費を引き下げるノウハウ

などなど、さまざまなものがあるだろう。

会社の機密情報はご法度だ。しかし、自身のノウハウであれば問題はない。しかも、自分のコンテンツが売れるーー、ということ自体に愉悦がある。

詳細はまたサイトが完成したらご連絡する予定だ。もし、ご興味のある人は、自分のコンテンツを準備していてほしい。

私はオオカミ少年にはなりたくない。ただ、どう考えても、今の時代に「会社だけを収入源にしている人」はリスクが高すぎる。少しでも収入のポートフォリオを確保する時代になっている。リスク分散は金融資産だけではなく、個人の収入源にも拡大して考えられるべき時代なのだ。

そして最後に小声で伝えたいのは、「自分でモノを販売することはすごく愉しい」ということだ。この経験を少しでもみなさんと共有したい。電子書籍は会社単位では儲からない。ただ、個人は工夫の仕方によって、さまざまな道が拓けるはずだ。それを、個人が今後の混迷する社会を生きる際の手助けとできるのであれば、これに代わる喜びはない。

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