気が早い年末年始読書案内(牧野直哉)

気が早い年末年始読書案内(牧野直哉)

読者の皆さんの多くが、年末のボーナスを手にされていることと存じます。今年の冬のボーナスは、4年ぶりに増加、製造業が堅調とのこと。先行きが不透明な中で、すこし良いニュースですね。

しかしその使い道をみると、将来の不安を表して「貯蓄」がトップです。これも一つの準備でしょう。ただ、貯金は現在の金利では大きなリターンは望めません。そこで、大きなリターンを目指して今回は「投資」をオススメします。投資先は、誰でもありません、読者の皆さん自身です。皆様の脳に活力を与えるような読書に適する本をご紹介します。

つながる読書術 日垣隆 http://amzn.to/vQpZh7

実際に本を読み終えることは大変ですよね。一人で活字を見ていると眠くなる。実際にどんな本を読んで良いのかわからないといった事もあるでしょう。日本の教育で読書といえば、「本を読みましょう、そして感想文を書きましょう」でしょうか。これだけではどうやって本を読み切るかとの教育ではありません。

今回ご紹介の「つながる読書術 日垣隆 http://amzn.to/vQpZh7 」では、筆者による膨大な読書量(個人での蔵書は9万冊とか)に裏打ちされた読書の方法論が示されています。そして一番オススメしたいのは、4章に書かれている「読書会」です。同じ本を何人かで読んで、感想を披露しあうというものです。詳細は文中にゆだねますが、これがけっこうおもしろいんですよ。本有料メルマガの共著者である坂口さんや、仲間と一緒にこれまで何回か開催しています。本の内容への理解が深まるし、なにより参加者同士の理解が深まります。自分ともう一人いれば開催可能です。この本は、読んだ後の行動を提示しているという点で、最初にあげることとしました。

日本は悪くない 悪いのはアメリカだ 下村治 http://amzn.to/uBhm8D

今年の後半に話題となったトピックスの一つはTPPでしょう。バイヤーとしては「自由」と「規制」といった二項対立的な観点でいえば、活動に制限の無い「自由」に軍配を上げます。一方、TPP反対論を展開する文献の多くは、なにか農業・畜産の保護=選挙意識と思えてなりません。なにか、昨今のTPP論壇から遠いところで、本質論を語る文献は無いかと探していてめぐり会った本です。

この本は内田樹さんが、ご自身のブログの中で絶賛したことで話題になっています。昭和62年に書かれた本書は、現在にも十二分に通用します。この本を読むことで、日本という国の進みが、ある部分四半世紀止まってしまっていることも実感できます。

考えるヒントで考える 中野剛志

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引き続き、TPP関連でめぐりあうことができた本です。
この本の著者はTPP反対の立場をとっています。反対する論拠を朝のワイドショーで若干切れ気味に語ったことを、あるタレントがTwitterで態度について苦言を呈したことで話題になりました。TPPを反対する論拠を著した本にも目を通しました。そんな中で、一番印象に残ったのがこの本です。理由は、私が現在日々おこなっていることと、真逆の主張であるためです。たとえば情報について。広く収集した情報の中から取捨選択を行うのが私の立場とするならば、この本には徹底的に考え抜く「深さ」の重要性が語られています。単行本としても高価な部類の本ですけど、非常に心に強い印象を焼き付ける尾を引く本なのです。私にこれまでとはちょっと異なる大事な視点を与えてくれた本でもあります。

科学的とはどういう意味か 森博嗣

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科学という言葉の定義を試みた本。読み進めてゆくと、この本を執筆するきっかけの一つは、東日本大震災となっています。これから年末にかけて、今年一年を振り返る報道にふれることも多くなるでしょう。すこし時間が経過しているので、読者の皆さんご自身でも先の大震災について冷静な分析ができるはずです。この本は冷静に分析するために科学がいかに重要であるかが描かれています。

QCからの発想~仕事の質と効率をいかにあげるか 唐津一

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恒例の,BOOKOFFで¥100で買える本です。
この本は昭和57年に刊行されました。筆者は前書きでこのように語っています。

「日本のGNPは世界の一割に達し、その生産性の高いことが世界中に知られている。しかしこれは製造業において言われていることで、その他の分野については必ずしも世界の水準から見て優れているとはいえないところがある」

日本経済が成長し、後のバブル経済へとつながる時代です。世の中は成長するのがあたり前で、その後に数十年もの停滞がやってくるなんてつゆほどにも考えていなかった時代でしょう。しかし、当時既に様々な問題が顕在化していたのです。私がこの本を勧める理由は、日本が世界に誇るQC活動を、普段の仕事にどのように生かすべきかが書かれていることにあります。製造業に勤務されているかたでも、普段の自分の仕事にQCからの発想を持ち込まれている方は少ないのではありませんか。登場する事例は時代を感じるものばかりです。しかし、その本質は今でも十分に通用する好著です。

検証 東日本大震災の流言・デマ 萩上チキ

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今年を語る上で外せない東日本大震災。多くの読書案内で様々な文献が紹介されることでしょう。萩上チキさんには失礼ながら、一番紹介されそうもなさそうな本を選びました。デマに惑わされないと同時に、みずからデマを発信しないための情報の取り扱い方法を紹介しています。集めようとすれば、たくさんの様々な情報が集まる時代、見極める力を養うための好著です。

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