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2日目③
じゃあ実際安く買うためにはどうしたらいいだろうか。それはお金を少なく払う
ということだ。たとえばこんな話はどうだろう。あなたの取引先から見積もりが届
くとする。そして契約がまとまって、実際支払いの段階になる。でも、相手先から
の見積りよりがずっと低い金額しか払わない。たとえば1000円という見積もり
だったとしても900円と入力して、システムに送金してしまう。もしそういうこ
とが可能ならば、何もせずに10%安く買うことができるだろう。しかもむこうの
合意など取り付けない。これならば難しい技術もいらない。難しい知識もいらない。
努力もいらない。ただ、結果は10%安く買えたという事実だけだ。
これは笑い話だろうか。いや違う。なぜならこれを実際にやった企業があるから
だ。ある大手自動車メーカーはこれをやった。一方的に最終通告して、実際に値下
げしたあとの金額分しか払わなかった。最初は取引関係を切られるのを恐がって部
品メーカーは従っていたが、じきにその大手自動車メーカーは業績を悪化させ、結
果として発注量が減った。そして部品メーカーから訴えられた。
上記の大手自動車メーカーの話の例でいえば、そこには両社の合意はなかった。
10%安くしたいのであれば、10%安くしてもいいよという両社の合意がなかっ
たのだ。これであれば訴えられても当然だろう。でも覚えておいてほしいのは、似
たようなことはどこでも行われているということ。実はこういう手段の方が小難し
い知識や能力を使うよりも、はるかに上の成果をあげている、ということだ。
こういうことは普通の教科書では描かれることは無い。だけど、実際にある。こ
の話を聞いて、「ひどい」と思った人でも似たようなことを実はやっている。強制入
力じゃないにしても見積もりを受け取った瞬間に、「はい。ここは5%下げてね」と
いう感じで赤鉛筆で値段を消して5%減額された金額を上書きし、その金額で決定
したりしている。違うかな?
でも本当にそんなことをバイヤーはしたいんだろうか。バイヤーはじつは安くし
たくも何ともないと思ってる。私がある企業から講演に呼ばれた時のことだ。私が
一番最初に、「本当は、バイヤーは安くしたくない」という話をした。実はバイヤー
は買っているものを安くしたくも何ともない。この挑発的な言葉に聴衆の多くがう
なずいていた光景が忘れられない。そうなのだ。本当にバイヤーは安くしたくも何
ともない。最初から安い金額が提示されていればそれでいい。