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震災から2年後、本気で伝えたいこと
東日本大震災から丸二年が経ちました。調達・購買・資材部門として、この
大きな天災をきっかけに変わった企業は少なくありません。それはもちろん、
業務プロセスや業務ルールだけの意味ではありません。もっと深い、仕事人
としての意識変化です。あのような大震災が起きたときに、企業人は何を考
えるべきなのか。自社生産のことを第一に考えるのか、サプライヤのことを
優先して考えるのか、または日本全体のことを考えるのか。あの大震災がつ
きつけた問いは、私たち一人ひとりの仕事人としての姿勢だったように感じ
ます。以前、下のような文章を某誌で発表したことがあります。東日本大震
災から丸二年の節目で、ぜひ共有したいと思います。
* * *
2007年の新潟県中越沖地震のときのことだ。現場のバイヤーであった私
たちは、納期調整に困難を極めていた。地震が起きるとバイヤーたちは取引
先の安定供給確保のために奔走することは当然だ。震源地近くのサプライヤ
ーのもとには連日連夜、全国各地のバイヤーから電話がかかってきていた。
バイヤー企業も単に納期フォローしていたわけではない。人的支援の一環で、
トヨタ自動車をはじめとする企業たちが、一斉に人員を新潟に向けて投入し
ていた。サプライヤーの工場作業員だけではなく、そこには全国各地からの
「助け合い」の力が結集していたのである。
たとえば、トヨタ自動車から震災サプライヤーもとに派遣されたスタッフが
手伝っていたのは、なにも自社生産分だけではない。他社向けの生産分も同
様に支援を行っていた。そこには、「自社分」「他社分」という境界はなか
った。ただただ、生産持続に向けて、全体の意識が一つになっていた。
とはいえ、現場は現場だ。バイヤーたちは、ひたすら納期フォローを繰り返
していた。「あの部品はどうなった?」「遅れられると困る」「どうすると
もりだ」……人間は窮地になると醜い部分を出すものだろうか。言い争いが
オフィスに響いていた。
すると、一人の異常に恐れられていたマネージャーがいた。担当者は、部材
のストップについて怒鳴られるものだと覚悟していた。マネージャーは納期
フォローしていたバイヤーの電話を取り上げた。そして、すぐさま電話を切
った。「お前なあ、先方は家族がいるのに、生産を継続してくれているんだ
ぞ」と言った。「相手のことを考えろ」と。
私は救われた気がした。なんとなく、ではあるものの。
マネージャーというものには二種類あるらしい。そのあと、担当者と話す限
り、二種類の対応があったらしい。
(1)部材の確保のみを考えていたマネージャー
(2)人の安全のみを考えていたマネージャー
私はこの二種類のうち、どちらが倫理的に優れているかといいたいわけでは
ない。ただし、訴求力を考えるに、後者のほうに優位性があったように思え
てならない。
* * *
私は著作「大震災のとき!」( http://amzn.to/ruhKdK )で、私たちに必要
なのは「大きな正義」だ、と書きました。私たちは、大きな正義を持っている
でしょうか。調達・購買の観点からそもそも「大きな正義」とは何でしょうか。
これからも私は自問を続けようと思います。