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一方通行なバイヤー
「掛けなおしてもらえませんか?今、担当者がいないので」
ちょっと大きめの声がフロアに響く。ん?!何があったんだろ?こういう時の電話の内容は結構気になるもの。同僚のバイヤーは、語気を荒げかけている。どこからの電話だろう?どんな問い合わせ?そんなに理不尽な頼みごとなのだろうか?
「今の電話ってどっから?」
興味本位で聞いてみると、長年大きな取引を行っているサプライヤーの、極めて優秀で真面目な営業担当者からの電話だった。用件と言えば、発注された製品の、サプライヤー側に保管されている図面が、最新かどうか確認してほしいとの依頼とのこと。私は思った。それくらい、パソコンで確認すれば数十秒で解決する話なのに・・・・・・と。要件をメモにして、担当者に渡して、折り返して回答する方がよっぽど会社としては非効率だし・・・・・・。
そのバイヤーは、私から見て一言で表せば「一方通行なバイヤー」だ。サプライヤーさん相手にもびっくりするくらい一方的な交渉を仕掛ける。どんだけ自分を棚上げすればいいの?って位に、自社の都合を横に、それもかなり遠くへ置いて話をする。話を聞いている相手の表情が厳しくなり、目線が落ちてゆく・・・・・・かなり小心者の私は、一刻も状況を打開したいと思う場面。でも担当は一方通行な人だしと思うと、なかなか発言もできない。うぅ~・・・・・・。
私は、あまり細かいことにはこだわらない性質なので、基本的には「どーでもいーやー」と思っていることが多い。だから、サプライヤーとの交渉に、自分を棚に上げ、横へおきながらも自社の要求を強く主張するそのバイヤーは、ある意味で尊敬している。信念っていうのかな?非常に自分を強く持っており、それは素晴らしい事だと思う。
私が「どーでもいーやー」と思うのは、長所短所って表裏一体だし、バイヤーとサプライヤーの関係だって、明確にどっちが悪いとか言い切れるケースって少ないと思っているから。あと、基本的に「なんとかうまくやろう」という部分を重要視しているので、例えばサプライヤーを糾弾してもしょうがないと思っている。バイヤーって結局良品を納入してもらってナンボだし、サプライヤーの皆さんに仕事してもらうことが、バイヤーの責任になる。だったら、自分は多少引いても、相手に気持ちよく仕事をしてもらいたいと思うから。でも、それが逆に言えば、主張することの妨げになっているな~と思う。一方通行なバイヤーだって、自社の利益の最大化を目指してのアクションなのだ。表現方法が違うだけで、最後に目指すゴールは一緒だと思う。だから、理不尽と思うような交渉でも「なるほどなぁ~」と思えるのである。
と、言っても「図面くらい見てあげなよ~」と思わずにはいられない。