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コストダウンの次にくるもの(2)
前述の購買マンの口癖はこうだった。
「あれだけ安くしたんだから、多少は遊ばせてくれたっていいじゃねぇか」と。
それはまさに、免罪符のように周囲に、そして自分に向けられた言葉であったのである。
「俺は悪くない。俺は悪くない」と。
確かに、そのバイヤーは、よく大型の原価低減案件を成し遂げていた。
この部品を、こうすることにより、大幅なコスト低減が実現できる。今まで誰も気づかなかった観点でコスト施策を実行すれば、これだけのコストが安くなる、と。
それはまさに、中世の錬金術師のように鮮やかに、自己の実績を上げていっていたのだった。
しかし、そのあとに、不思議に思った私がサプライヤーや設計者に聞いたり、現場の方々に雑談のように聞き調べたところ、それは全くの事実誤認であったことが分かった。
例えば、基板用抵抗器の種類削減。
確かに、種類は削減してコストは下がったかのように見えたものの、代替品はカラーコードのない台湾品。
現場では混乱し、マーキングを施したり、組み付けミスが多発。挙句の果てに、足回りの違う大きさのものを統合したゆえに、現場では穴加工のやり直しを実施していた。
例えば、ブレーカーのコスト削減案。
確かに、コストは削減したものの、他のユニットが標準化されているために、取り付け位置を変えることができない。
そこで取り付け位置の補正のためにブラケットを追加して対応することになっていた。そのブラケット費用とアッセンブリー費用を合算したら、コスト減の効果を遥かに超していた。
などなど。
全く効果なんてなかったのだ。
・・・・
この例は、2つのことを教えてくれる。
1つ目。
バイヤーのコスト低減の評価は単品でなく、物流や工作やその他の変化仕様等、全ての外部環境を含めたものとせねばならないこと。
そしてバイヤー自身がそのことに敏感になっていること。評価者も、単品だけで考えずにトータルなコスト効果を見る必要があること。
2つ目。
コスト低減をしたから、会社からキックバックを受け取っていい、という心持は間違いであること。
それは給料というカタチや報奨金というカタチで支払われるべきであって、それ以上を求めるのであれば、不満を言わず、独立するべきだろう、ということ。
特に、自分の成果を、まわりまわってサプライヤーから得ようとすること自体が、どこか虚しい。
私は成果主義に反対する立場ではなく、むしろ賛同する立場なのだが、サプライヤーから利益を得ようとするスタンス自体にどこか違和感を感じている。
・・・・
そして最も教訓とすべきは、何も悪いことをしていない一般のバイヤーではないだろうか。
実はうすうすデタラメなコストダウンを皆が報告していることを知っているはずだ。
資料をデッチあげて、報告さえ済めば、ハイ終わり。
そして、期待効果として、恐るべき額を挙げつづけておけば、いつか誰もが忘れるときがくる。
そうやって、今日もまた日本国中で、デタラメなコストダウン報告なるものが流されつづけているのだ。
無駄なことは止そう。
そして、本当に効果のあるものを考えていこう。
「キャバクラくらいは自分のカネで行こう」