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バイヤーは何をやってもいいわけではないけれど(1)
「ガムを噛みながら、サプライヤーと交渉しよう」
「今日はねぇ、ついにガムを噛みながら話されてましたよ」
以前、私が関西に在住していた頃、あるメーカーの帰りに必ず私の元に寄る営業マンがいた。
電車の路線がつながっていることもあり、その営業マンはまずそのメーカーに行ったあとに、私の会社に来るのだった。
その営業マンが担当しているのは私の企業と、そのメーカーだった。
そして、もう一つの企業でひどい仕打ちにあっているらしく、事細かにその企業でされた仕打ちに関して私に話すのだった。
「『やる気あんの?ないの?』なんてね、そんな感じなんですよ。ほら、そういう人たちって親分肌で、気に入られたら面倒見てくれる、みたいなそんな感じあるでしょう?だけど、そのメーカーさんは全くないんですよ。冷たいっていうか、単に厚かましいっていうか」
「それでね、今日は、アレですよ、アレ。『忙しい』ってね、言われるんだけれど、新商品に使ってもらうタンタルコンデンサの売り込みでね、行ったんですよ。そしたらね、ガム噛みながら交渉されちゃって。しかも、その人がキーマンなの。もう、呆れちゃって」
などなど。
その営業マンの言うことは途切れることがなかった。
私は、聞きながら、まさにこれは隠れた企業文化だ、と思い当たった。
さらに、その営業マンは言うのだった。
「あのねぇ、覚えておいた方がいいですよ。○○○○の○○さん。業界では有名なんだから」