あなたの知っている情報、あなたの知らない情報(1)

あなたの知っている情報、あなたの知らない情報(1)

「なんでわかんないかなー。違うんですよ」
勉強好きの営業マンがいた。

なんでも分かっている、というのだった。

その営業マンは、目の前のバイヤーに対して、色々なことを語っていた。

これから、この製品の市場はどうなっていくのか?そして、エンドユーザーの動向はどうなっていくのか?

あたかもその営業マンにかかれば、全ての市場動向やら技術トレンドがその営業マンの思い通りに動くかのように語るのだった。

その市場動向やら技術トレンドの延長上に自分の営業戦略があるかのような、その口ぶりを止めることのできる奴などいなかった。

そして、バイヤーがちょっと疑問を挟むと、必ずその営業マンは言うのであった。

「違うんだよなー。そうじゃないんだよねー。なんでわかんないかなぁ」

と。

・・・・

もちろん、目の前のバイヤーとは当時の私だった。

そして、目の前の営業マンとはとある商社の情報機器関連の人だった。

その頃だっただろうか?
雑誌が次のようなことを書き始めた。

「今からのビジネスマンに必要なのは、PCスキル・英語・国際会計である。これがこれからの3大ビジネス能力である」と。

確かにその重要性は、2005年の現在も色あせることはない。

ただし、やはりバイヤーや営業マンであれば直接対話する能力が、それでもなお大事だ。

その重要性が分からずに、ネットサーフィンと数値遊びで分 かった気になっている人がいるから困るのだ。

「マーケットはこうなるんですよ。 なんでわからないかなー坂口さん」

こんなことを平気で言うから困る。

「じゃぁその根拠は?」なんて訊いてみても、「いや、マーケットの情報が示してますよ」なんていう。

「誰がそんなこと言っているんですか?」と訊いてみても、「誰でも言ってますよ、誰でも」としか答えることができない。挙句の果てには、よくわからない横文字のCEOだかの名前が出てくる始末だ。

私は何回かの面談のとき言ってみた。

「あのねぇ、その話全くの逆ですよ。私は他社の一番売っている営業さんから、○○○○っていう事情を聞いたんですよ」と。

そしたら相手は言ってきた。

「本当かなぁ、それ本当に?その人ってキーマンですか?」

ここまできた瞬間に私は話すのを止めた。

この営業マンのような、そういう人に限ってなんたらレポートとかを大事にしている。

おそらくこういうことだと思う。レポートを読んで市場の声を聞くんじゃない。市場の声を聞いて からレポートを読むのだ。逆じゃない。

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