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周りがオカシイ、と思うことから始まるバイヤーの近代化(1)
「この娘の頑張りに免じて、許してください」
風俗店で手違いがあったときの客と店員の会話ではない。
不良品の納入を謝りにきたサプライヤーとバイヤーの会話だった。
ある電機メーカーの商談室でのこと。
いつもそこに通っている営業マンは「マン」ではなかった。営業ウーマンだった。
その日も例のごとく、キャピキャピした格好とミニスカート。ただ一つ違ったのは、隣に嘘臭いほど真面目そうな男性上司がいたことだ。
開口一言めから、その上司はひたすら「申し訳ない」を連発するのだった。
そして、隣に座っているその営業ウーマンは何も発しない。
泣きそうな顔。そしてうつむく姿勢。
上司はまだコメントを続ける。
「もう、実は品管の○○課長には背景を説明しておきました」
「生産管理の○○さんにも連絡して説明しておきました」
「そういうことですから、この娘の日々の頑張りに免じて、許してください」
呆気にとられたバイヤーは何もいうことができなかった。
そして、その日の夕方にその営業ウーマンからメールが入っていた。
「この度は申し訳ありませんでした。(中略) 今後も御社のために尽力していきますので、どうかよろしくお願い致します。」
・・・・
この京都に本社を構える、半導体メーカーの営業手法はかなり有名だ。
営業ウーマンのキラキラさ。
工場や本社の見学に行けば、営業マンではなく、キレイな制服の女性が二人っきりで案内をしてくれる。
そしていざというときに出てくる男性上司。
バイヤーが社内調整しなくてもよいように、代わりに社内のキーマンには連絡をしてくれている。
こういう感じだから、この企業は年々売上を伸ばしているのだ。
バイヤーもこういう企業にだまされているからしょうもないのだ。
この企業は決して製品コストは安くない。それは営業サイドも了解している。そして、めちゃくちゃ納期対応が素晴らしい、ということでもない。
しかし、その評価軸でははかれない領域で顧客の心をつかむ戦略なのだ。
これは、その京都半導体メーカーを批判する意味では決してない。
各企業には営業戦略があってしかるべきだ。
私がいいたいのは、こういうメーカーを噂話にしているバイヤーが侘しくてしかたないのだ。
「あそこの○○ちゃんねぇ、なかなかよくってさ。この前二人っきりで飲みに行って、楽しかったなぁ」
なんて言っているバイヤーを多く見てきた。
それが意外に年配のバイヤーにもいるから困ったものなのだ。