周りがオカシイ、と思うことから始まるバイヤーの近代化(2)

周りがオカシイ、と思うことから始まるバイヤーの近代化(2)

   例えば、キーエンスなどは「購買・調達部門は相手にせず、なによりも生産現場に向かい営業する」と断言している。

ここには、次のような思惑がある。

・バイヤーは何を買うかを決定しない(できない)
・不要なものであっても、バイヤーの社内での力は弱いから、現場が「買いたい」といったら買うだろう
・つまりバイヤーに売り込む意味はない

繰り返すが、これはキーエンスへの批判ではない。

少なからぬ購買部門を見るにつけ、ここには売り込んでもしかたないだろう、と思うことが多い。

私が営業マンだったら、バイヤーなどには売り込まないだろう。

設計者か現場に向かう。

モノも覚えない、わからない、コストのことも他社比較でしかわからないようなバイヤーなど見向きもするものか。

そして、こういう現状だからこそ、バイヤーは変わらなければいけないのだ。

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あなたは、「自分で決めた!」という感覚を持っているだろうか。

あなたは部下に、「自分で決めてみろ!」と仕事を委任したことがあるだろうか。

仕事の面白さは、自分に責任が委ねられているときにある。そしてその責任の中で何かを創り上げることにある。

結局は、「まっ、バイヤーなんて、何にもできないから、楽しんだ方がトクじゃん」みたいなことを思ってしまうから、前述のような営業ウーマンにハマってしまったりするのだ。

オフ感覚は必要だが、恒常的なオフ感覚では何も生み出すことができない。

だから、日々の業務の中で、「自分で決めた!」という体験を積み重ねなければいけない。

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以前、勤めていた企業のシンガポール支店でシンガポール人のバイヤーがいた。

ある日、日本企業サプライヤーの営業のトップがそこに訪問したことがある。

そのとき、その営業トップはシンガポールのスタッフが日本語を解さないと思ったらしく、こうつぶやいた。

「現地人はいいから、日本人のマネージャーに会わせて」

それがシンガポール人バイヤーの怒りに触れた。もちろん日本企業の現地スタッフだから、日本語くらい理解できたのである。

翌日から、そのバイヤーは全身全力をかけて、そのサプライヤーの購入金額をゼロにすべく、「サプライヤー外し」に奮起した。

2ヵ月後、シンガポール支店がそのサプライヤーから購入する金額はゼロになった。

慌てて、営業トップが謝罪にきたのはいうまでもない。

そのバイヤーは、「俺たちの力をみくびるな」といった。

カッコいい、私は彼からこの話をきいたときにそう感じた。

別にサプライヤーをいじめることがカッコいいわけじゃない。男の意地を見せることをカッコいいと感じているわけではない。

だけど、やはりカッコいいのだ。

バイヤーという職業に自分の総蓄積をかけ、自己の存在意義を「これでもか」というくらい見せつけるこのカッコよさ。

私は、やる気がなく、覇気がなく、漂うだけのバイヤーを見るたびに彼のことを思い出す。

「全てのバイヤーは、自分の存在意義を見せつけなければならない」

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