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売価とは一体なんやろかい(2)
私の経験を話す。
以前、リコーの半導体と某社の半導体を採用検討していたことがある。
その結果、明らかにリコーの半導体が安価だったにも関わらず、サポートとソフトの関係で遥かにコストの高い某社を採用決定したことがある。
富士通のデバイスでも同じ経験がある。
これは全くその半導体単体の機能としては説明不可能なものだ。
コストテーブルを例えばDRAMに適応したり、材料分野に適応しても、それは全く意味のない長物となってしまう。
あの無数の機能を持つデバイス群を数行の計算式で計算してしまおうというのは、全く持って無理のあるものだ。
逆に、私が経験した単純機能品や、プレス品であれば、コストテーブル化は有効であると言える。
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おそらく前述の上司が犯した過ちは次の2つの物品を混在させてしまったからであると思う。
(1)市場、市況がコスト決定品
(2)造り領域からのコスト決定品
(1)に対して(2)のアプローチをすることは意味がない。(2)に対して(1)のアプローチをすることは意味がないのと同じだ。
足し算の世界と、市場優先の世界をゴッチャにして語ることは意味がない。
そして、あえて語るのならば、世の中に溢れる購買のノウハウ本は(2)のみを相手にしている。
(1)の場合は、単純な相見積もりと、同一サプライヤー内の類似品比較、その程度のものが最も役に立つ場合が多い。
それでも、なぜCPUがたかだか1年で30%以上も安くなってしまうのか、全く説明ができない。それは、多くの場合、当初は開発費と償却費がのっかっているからだ。この部分の箇所は聖域のようなもので、それをバイヤーに明示化するサプライヤーなどどこにもいない。
つまり、そういうものなのだ。
・・・・
最後に矛盾したことをあえて話す。
市場優先の製品であってもバイヤーはコストに関して自己の基準を持たねばならない。
そういうことをしないバイヤーばかりだから設計の意見を聞かないと何もできなくなってしまうのだ。
「いやぁ、設計に聞いてみます」が口癖で、設計に行くとこう言う。
「あれっ。そうですか。これ高いかなぁ?うーん、確かにこの見方でいくと高いですねー」
そして哀れなバイヤーはサプライヤーと設計の間を行き来することになる。
挙句の果てには設計を連れ出してコスト交渉まで代わりにやらせる人もいる。
この基準を持つためには、わずか3日を費やして担当製品のコストを並べてみるだけでよいと言ってしまおう。
そして、わずか3日の勉強ながら、その程度も勉強しているバイヤーなどいないことも付け足しておこう。
「あなたは設計とサプライヤーの餌食になれるほど自由だ」