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がいこくじんというのはよくわからないものだ(1)
「こういう理由なんですよ。絶対不可能なんですよ」
ある社内会議の席上。
異常なほどの執念で予算を上げさせようとしているバイヤーがいた。
「この予算では絶対にこの製品を購入することはできません。予算の設定が間違っているのです。理論的にも不可能です。あなたが買えるのならば、買ってみてください」
「こういう理由で、そこまで高くならないだろう」と言われても「いや、モノも見ずに何を言っているんだ。実際ものを見た私が言っている。このコストでは全然合致しない」と繰り返すだけだった。
付け加えて、そのバイヤーは、こうも言った。
「じゃぁ、一緒に見に行きましょう。絶対このコストで買えないから」
そこまで言われると、その話を聞いていた皆は静かになった。
しかたがないな、という雰囲気に包まれたその会場を変えることができる人はいなかった。
それから10分後。
「わかった、じゃぁ、このコストアップで了解するしかないよ」
そのバイヤーと対話していた相手は渋々、コストアップを認めるしかなかった。
会議が終了したとき、そのバイヤーは部屋を出るなり、ニヤリと笑った姿は忘れられない。
・・・・
上記の会議は、私の属した企業の海外支店から、現地バイヤーが来たときのことだ。
予算内でモノを買うことができなかった。これはつまりバイヤーとして失格を示す。
逆に、予算よりずっと低いコストでモノを買うことができれば、それがカウントされバイヤーの評価につながっていく。
もっといえば、その海外支店のやり方では、予算よりどれだけ低く買えたかのみがバイヤーの評価軸となっていた。
だから、外国人バイヤーは日本に来るたびに予算の上昇をお願いするのだ。
なんと言われても、言いがかりをつけても、どんな手段であれ予算を上げることに注力するのだった。
もちろん、成果主義の徹底した組織の弊害、と言ってしまえばそれまでだ。
5年もいれば、半分は辞めてしまう(辞めさせられる)彼らにとっては、家族を守るためにしかたのない行為であるとも言ってしまえる。
結果が全て、の組織に属するバイヤーは、こうでもするしか自分の生きる道はない。
哀しいがそれが現実だった。
そして、優秀なバイヤーにはヘッドハンティングの電話がばんばんかかってくる。
もちろんそれは、予算を上げるだけの強引さを持っている、ということと多くの場合同義であったのだが。
数ヶ月ごとに担当者がかわるのも珍しいことではなかった。
ただし、こういう状況を見て自分なりに感じたことは今でも覚えている。
「予算を釣り上げることだけに注力し、会社の収益を悪化させるバイヤーが最も優秀とされるとは、なんと皮肉なことか」と。
「やぁ、ひさしぶり、GEに転職したよ。何かいい仕事があったらいつでも紹介してくれ」というメールがいきなり届き呆然としたこともあった。