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「安い」ってそもそも何?(2)
私はサプライヤーを攻める気はない。
どんなに極小文字であっても、書面に書かれた内容は正であり、あくまでその正しさにはかわりがない。
むしろ、そういう条件を見抜けなかった、あるいは分かっていながら、黙認してしまったバイヤーが悪いのである。
それにしても、まだこのサプライヤーはましであるかもしれない。
かつて、外資系企業でこんなことがあった。
見積もり競合で結構安価な見積もりを出してきたサプライヤーがいた。
安価なのはいいのだが、内容が全く不明であり、しかも日本支社の人間では全く説明できなかったので、本国から技術者を呼ぶことを要請した。
すると、説明後に「日本滞在費」および「業務費用」を請求してきた。
日本であれば、「受注前活動」として割り切られるところを、受注前に、しかも通常レートより高いコストで申請してきた。
もちろん、この費用は払わず、その企業の日本支社サイドになんとかしてもらった。(ちなみにあまりに頭に来たので、彼らが泊まったホテルに直接電話し、詳細を訊くと彼らが「業務費」として申請してきた内容にはワイン代が含まれていた。なるほど、立派な「業務」だ、と感心した記憶がある)
・・・・
勢いで書いてしまうが、日本のサプライヤーでもひどいところはたくさんある。
ある業界トップメーカーは、納品書とともに、その製品を納入するまでにかかった通信費用を請求してきた。
FAX1枚いくら、までやってしまうのだから閉口した。
しかも、そういうところに限って、設計者をがっちりとおさえているからややこしいのだ。
このサプライヤーは、突発でモノを持ってきてくれるときも、特急代金と称して物流費を依頼してきた。しかも赤帽なみの金額だ。
営業マンが持ってきただけなのだが、それはそれで「会社の決まりですから」という。
このような会社に属せばならぬ人々に心から同情申し上げる。
しかし、話の筋を戻すと、このようなサプライヤーであるならば、その特性を広く知り、その上で購入を決定できなかった私の責任ということもできる。
いや、もっとひどいのは、何度も何度も熱心に売り込みに来たカスタムICを、採用の数ヵ月後に生産中止にし「保守費用」などという訳の分からない代金を請求してきたところだ。
さらには、「追加オーダーは5,000個単位になる」とかなんたら。
その他には・・・・
いや、止めておこう。これは、自省の意味も込めて述べた。
・・・・
サプライヤーの評価を、どうしても表面上の数値だけで判断してしまうことがよくある。
QCDDと誰もがよく言う。
Qualityは、直近の納入不具合と市場クレームをまとめあげる。
Costは、競合で目標コスト以下かどうかをまとめあげる。
Deliveryは納入遅れがないかをまとめあげる。
Developmentは開発体制の優劣、技術力を判断してまとめあげる。
しかし、本当にそれだけの尺度でいいのだろうか。
バイヤーとしての評価に必ずしも結びつかなくても、もっと深い地点を見てサプライヤーを観るべきではないか。
表面上のコストだけで決めるのは、なおさらのこと浅ましいことではないか。
ではどうすればよいか?
それを考えることは、まさに自分のバイヤーとしての付加価値を考えることに他ならない。
なぜ自分はそこにいるのか?いていいのか?機械にできず、他人にできず、自分しかなし得ないことは何か?
こういうことを考える長い道程のはじまりに立ちはじめたのではないだろうか?
そして、今までの自分を絶えず否定するはじまりではないだろうか?
「生きる」ということ「働く」ということは、常にそれまでの 自分の常識を絶えず否定し、新たな場所へ飛び込んで いく過程であり、その過程で今までの自分の甘ったれた考え方を覆す思考の始まりだと思うのだ。
「表面的な事象でなく、深層を通じて自分をも変えよう」