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金儲けとバイヤー(1)
「絶対カネ儲かりますって、絶対ですって」
そのバイヤーは、某有名半導体製造装置の営業マンから株を勧められた。
対象はその某有名半導体製造装置企業の株だった。
その営業マンは言うのだった。「今の株価は絶対に低く評価されすぎています。絶対に今後上がります。どうですか?この程度の情報だったらインサイダーにはならないでしょう。でも、絶対に株価は上がりますよ」
そのバイヤーは「いえいえ、今は結構です」と言葉を濁した。
バイヤーはその後に、実際株価が上がるのを見ることになる。
「買っておけばよかった」と思うこともあったが、後悔したことはなかった。
「自分が納得したものしか買わない」と決めていれば、他人が推薦しただけのものを買って失敗することとも成功することとも無縁だからだ。
そして、その株はその後に暴落を始めることになる。
加えて、バイヤーは同時にその営業マンが推薦していた部品メーカーの株も暴落していくのを見ることになる。
そこから幾星霜。
ある株について全く同じことを言っている人を見ることになる。
「絶対カネ儲かりますよ。絶対ですって」
・・・・
そのバイヤーは私だった。
ライブドアの関係会社に取引があるというその営業マンは、私にさかんにライブドア株を勧めてくるのだった。
私は数社の株式を持っているので、興味がないわけではない。むしろ、同年代の男性や女性よりもむしろ興味はあるほうだ。
しかし、私はライブドアの株を買わなかった。
あれほど値動きの激しい株は持てないこと、実情が分からない企業の株は買えないこと。これがその当時にライブドアの株を買わなかった理由だった。
その話を聞いた1年後に、私は「ライブドア社長逮捕」の知らせを聞くことになる。
やはり「自分の納得しなかったものは買うべきではない」と思ったのはいうまでもない。
いや、私はライブドアの犯罪自体を予想していたわけではないし、その犯罪の内容を聞いても責めるに値しないと思っているくらいだ。
時代の寵児、とすら言われた「堀江社長逮捕」のニュースを聞き、私は一般の報道とは別のことを考えざるを得なかった。
それは、先進諸国の脱製造業化とバイヤーの次なる道についてだ。