バイヤーは会社を辞める!!(1)

バイヤーは会社を辞める!!(1)

「いままでありがとうございました」

そのバイヤーは驚いた。つい1週間前までは、次の仕事の話をしていた奴だったからだ。

あるとき、定時のベルが鳴ったとき、全体夕礼のためにみんなが集められた。

そして、管理課長はこういったのだった。

「残念ながら、今月で退職してしまう人がいますので紹介します」。

そこで、みんなの前に立ったのが、そのバイヤーと仲良くしていた購買部の同僚だった。

今までの御礼を簡単に告げた後、その同僚はこう言った。

「これからは大学に戻り、その後、コンサルタントを目指そうと思います」と。

そのバイヤーは彼の挨拶を聞いてこう思った。

「また一人去っていったか」。

考えてみれば、これまで色々な人が辞めていった。製薬会社に行った奴。大学院に入学した奴。教職に次の人生を見出した奴。

行方知れずになってしまった奴もいる。そう思い出していると、そのバイヤーは一つのことに思い当たった。

「そういえば、次もバイヤーをやります」という奴がいないな、と。

友達の会社でもそうだ。ある会社の購買の業務を離れた後も、どこかの購買に進んで行く奴はいなかったのではないか--と思ったのだ。

・・・・

そういう風に思い当たったバイヤーとは私のことだった。もしかすると、この法則は私の周りにのみあてはまることかもしれない。

おそらく彼らは購買業務の矛盾と自分の理想のギャップに耐え切れず、離れていったのだろう。

いや、そのことが理解できないわけではない。むしろ、人並み以上に理解しているつもりだ。

購買ほど不条理な世界があるとすれば、通常の神経を持った人間ならば蒸発してしまうことだってあるのではないか。

それくらいの感情は持っていたから、次々と辞めていくことにさほど違和感は感じていなかった。

むしろ、「よく辞めないな」という感じでストレスに苛まれている人も見てきたから、決断して辞めることができた人はむしろ幸せというべきなのかもしれない。

無理な納期要求に、無理なコストダウン目標。日々設計者の言いなりになって、サプライヤーからは心ではバカにされる。

こんな日々がもし続いていたのだとしたら、確かに辞めることは一つの有効な選択肢となりうるのかもしれない。

その行き詰まり感に加え、「こんな仕事、俺じゃなくて誰がやってもおんなじだ」とまで思ってしまったらなおさらだ。

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