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搾取する側に回る論理!(1)
「これでダメだったら首を吊るしかないですよ」
それを聞いていたバイヤーは「おいおい」と思った。
そのバイヤーが、外国製の光スイッチを交渉していたときだった。
数日前までは、多量発注なのに全くコストが下がらなかったものが、今ではバイヤーは30%も値引きした見積もりを持っている。
同じく数日前もこの営業マンと会っていた。
そのときは、「なぜこの製品が値下がりしないか」ということを2時間にもわたって聞いていた。この営業マンはありとあらゆる理由を並び立てて、「このコストはなぜ高くないといえるか」「なぜこのコスト以上に下がることはないか」を力説していた。
それで挙句の果てには「もう、このコストで決めてください」と言い放った。
その営業マンが、だ。
わずか数日で値引きを敢行することになった。
理由なんてたいしたことじゃない。
しかし、その営業マンは顔色を変えてやってきたのだった。新しい見積もりを手にし、そのバイヤーの前に立っていたのだった。
「値引きしました。どうか、もう一度見てください」
そのバイヤーは「ああ、下がったんですね」と冷たい顔をした。
するとその営業マンは語るのだった。
「もう、どうなんですか! このコストでダメだったら首を吊るしかないですよ!!」
・・・・
そのバイヤーとは私だった。
私はその数日前まで悩んでいた。
めったにない大型発注。いままでにない発注の数量を見込んでいるのに、サプライヤーから発注前に入手した今回の大型プロジェクト対応の見積もりが全く安くないのだ。
いままで発注していた数量はせいぜい5個。
それが今回は60個ほどの発注だった。
1個20万円はしていたから、1千2百万円ほどの発注だ。
そんなに一気に発注するのだから、相当安くなってもいいはずだった。いや、理由はなかったのだが、かなり安くなってもいいはずだった。
しかし、現実はそうならなかったのだ。
営業マンから提示された額はほぼ同一の19万円。確かに多少安くなったといっても、期待しているレベルとは相当離れている。
目標は20%くらいはせめて安くしてほしかったのだが、これでは全然だ。
なぜこんなに安くならないのか?
営業マンは色々理由を並べるが、理由は一つしか思い当たらなかった。
その製品は、どうせその営業マンに発注がいくことがわかっていたからだ。
代替性などなく、バイヤーがごちゃごちゃ言おうが、受注することが分かりきっている製品などだれがコストダウンなどするものか。
当たり前だったのだ。