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搾取する側に回る論理!(2)
世の中は不平不満にあふれている。
あるバイヤーは「設計が上流で決めてしまうので何もできない」と不満をいう。
あるバイヤーは「設計の都合で製品が決まることを営業マンが分かっているので、バイヤーに交渉の余地はない」と嘆いてみせる。
嘆いたばかりでは、何も始まらない。
むしろ、そのシステムの強靭さを逆説的にアピールしてしまうだけの結果になるのは疑いようがない。
私の例だって、営業マンが完全に設計者の言うことしか聞かない典型的な奴だった。
私は、前記の全く下がらない見積もりを入手した瞬間に、設計者のところに行った。
そして、設計者の上長ともかけあった。
私がお願いしたことはサプライヤーを変更することではない。
ウソをついてくれ、とお願いした。
簡単なことだった。
「営業マンから電話がかかってきたら一言だけいってくれ」とお願いしたのだ。
営業マンからの電話には「いやぁ、あの件ねぇ。どうしても購買があなたのところを使うなと言っていて。私たちも困っているんだけど、かなり安いところがあるんでそっちを使え、と。前向きに考えているところなんですよ」とだけ言ってくれ、と。
もちろんこのときは代替メーカーもいなかったし、技術的なメドもたっていなかった。
だけれど、そんなに設計者のいうことを聞きたいんであれば、設計者の意見だけを聞いておけ、と思ったのだ。
・・・・
笑われるかもしれないが、私がとった施策は、設計にウソをつかせることだけだった。
しかし、営業マンは思ったとおり設計に電話をかけてきた。
そして、その営業マンは設計者からのコメントを聞いたのだ。
それからの態度の急変は当初に書いたとおりである。
私はこれをバイヤーの手柄として吹聴してまわりたいわけではない。
私が言いたいことは「制度を問題にするな。制度が悪ければ、それを使ってやることを考えろ」ということだけだ。
制度を問題にするのは、誰にだってできる。
簡単だし、自分の責任ではないと遠まわしにいうことだってできる。
だが、制度が問題であれば、そのトータルの制度が変わらない限りあなたに改善の兆しなどない。
理想はいい。
だが、少なくとも問題な制度がバイヤーの現実である以上、それをホネまで利用することは、「逃げ」ではなく「リアリズム」にほかならない。
例えば、戦後の思想化である花田清輝は、天皇の教えばかりを請う日本人気質を嘆いて、逆にそれを利用してみてはどうかと思いつき「じゃぁ天皇の命令でゼネストをやってみたら」と提案した。
制度を悪だと論じることは、ときとして現状逃避になってしまう。
現状逃避よりも、今を見つめよう。
そして、このバカげた現実をいかに自分に有利にもっていくかを考えるほうが100倍楽しい試みだ。
「バイヤーは、バカをバカにせず利用してみろ!!」