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購買の常識、世間の常識(1)
「そんなバカなこと止めてくださいよ!!」
営業マンは電話で叫んでいた。
ある若手バイヤーと話をしている途中のことだった。
上司から「バカ」と言われることはあっても、営業マンから「バカ」と言われたことはなかったその若手バイヤーは驚いた。
あなたのやっていることが分からない、とその営業マンは言うのだった。
そのバイヤーにしてみれば世の中の当然ことをしているつもりだったが、この世界ではそれが非常識らしい。そう、そのバイヤーは思った。
ある製品の価格調査を行っていたときのことだ。
その購買部の企業では、その製品はAという商社から購入することになっていた。
その製品の購買担当になったとき、バイヤーは先輩から「この商社は、この製品に関しては最も強いところだ」と教わっていた。
でも、たかが商社だ。
しかも、聞いてみれば、そのA社の設計者からの評判が良いわけでもなく、そのバイヤーが見ても良いとは思えない。
したがって、そのバイヤーはその製品を扱っている全国の商社に「いったい御社だったら、この製品をいくらで売ってくれるのか?」と調査を開始した。
すると、そのA社がどこから聞いたのか、そのバイヤーに電話してきた。
「どういうつもりなんですか?そんなバカなこと止めてください!!」
・・・・
そのバイヤーは私だった。
とある最先端部品が対象だった。
私が入社1年目で、研修を経て購買歴半年くらいのころだ。
電化製品を買うときに、色々な店で価格比較をし、そのあとで購入先を決めるのが当然であると常識的に考えていた私にとって、販売店(商社)間の見積もり比較をすることなど普通だった。
それまでは、先輩から「このA社でなければいけない」という理由を聞いていたとしても、である。
加えて言うならば、こういう場面に出会ったこともある。
その先輩が設計者と話しているときのことだ。そのA社への不満を持つ設計者に「いや、ここから買うのは購買戦略上のことですから」と言っていた。
その「購買戦略上大切な」A社以外を調査したところ、全く同じ製品を1割以上安く売っている商社がいくつもあった。
私は上手くできすぎていると思った。
「何かそのA社が優れているところがあるのではないか」。そう思って、色々な人に聞いてみた。
が、驚いた・・・。A社が優れていると特筆すべきところなど何もなかった。
私は購入ルートを変更し、「商流変更によるコストダウン」というレポートを書き、ほめられた。設計者からも感謝された。
私はこう思わざるを得なかった。
「ところで、あの『購買戦略上』ってのは何だっけ?」