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バイヤーが決め付けでno.1になる技術(2)
新規サプライヤーを参入させるかどうか、もっといえば「参入させた方がよい」という結論が導かれる仮説をつくっていたときに、ハーフィンダール指数と出会った。
ハーフィンダール指数とは、「ハーフィンダールIndex」の名称でよく当時読んでいた海外の購買本に出てきたものだった。
市場に参入している企業の持つシェアを2乗した値の総和によって求められるもので、例えば1社が完全な独占の場合100(%)の二乗で10,000(%)となり、競争が激しいほどその値は低くなる。
例えばその市場に2社が半分ずつのシェアを獲得している場合50(%)の二乗+50(%)の二乗で5,000(%)となる。
そして、この結論として、数字が小さいほど競争が盛ん(=コストが安くなる)という結論になる。
市場で成り立つは、自社の中でも成り立つのではないか。
そう考えた私は、ものは試しと色々な品種で「競合メーカーの多さ」と「コスト低減率」の相関をグラフ化してみた。
すると・・・驚いた。
競合他社の数が多いほど、原価低減率が上がっているのだ。まさに、この指数通りのことがあてはまった。
新しいものを現実に当てはめてみることが好きな私にとっては心躍らせる出来事だった。
直感的に、競合他社の数が多すぎれば、下記のようなグラフになるだろう。
すなわち、取引先企業をあまりに増やすと、ボリュームメリットがなくなり原価低減にはデメリットとなる。その頂点がどこかにあるはずだ。
このとき担当してたパワーサプライは、まだ競合他社過多とは言えず、競合他社を増やして原価低減が十分にできるであろうという「仮説」に辿りついた。
・・・・
ここから、すんなりと周囲がこの説明で納得してくれたかといえば事実は全くの逆。
新規サプライヤーの参入にはかなりの時間を要した。
しかし、このような仮説思考で物事にあたれば、議論のたたき台を提供でき、自己の主張を通すことが相当容易であることを知った。
繰り返すが、重要なのは「こういうことが予想できるので、こういうことをしたい」という仮説思考だ。それ以外ではない。
指標をこねくりまわすことが大切なのではない。
実際、この2年後に私はこのハーフィンダール指数が、特別な方法でもなく、購買のプロフェッショナルの間では普通に使われていることを知った。
全然特別な方法ではなかったわけだ。
だが、「世の中ではもっと最先端を走っている人たちがいる」ということを知ったときは、購買というものの奥深さを知った気がした。
・・・・
他の方法についてはまた別の機会に譲ろう。
そして、加えて重要なことは、こういうことを勉強する人がほとんどいないので、バイヤーほど頭角を現すのが簡単な業種はない、ということだ。
ためしに、専門書を5冊ほど読み、そこで覚えたカタカナ用語を3つ使って上司へ報告してみろ。
一回に3つ使ってはいけない。それは単なるひけらかしだ。
さりげなく、一つずつ。小刻みに使ってみろ。
「こういう尺度で分析してみたところ」と、さも普通かのように口に出すのだ。
最初は「何だそれは?」と訊いてくる上司も、あなたが落ち着いた口調でゆっくりと「はい。これは○○大学(外国がふさわしい)の○○教授の提唱した理論で、一部では有名な分析手法でして」と説明すれば、「ふーん」とだけ言ってあとはもう聞いてこないだろう。
どうせ理解する気はないのだから、問題はない。
いつの間にかあなたが「すごく頭のよい人」と言われるのを保証しよう。
上記は、もちろん半分冗談である。
私が強調したいのは、簡単なことでも学ぶことによって業務の方法が変わるということだ。その方法によって仮説思考を身に付け、自己の業務の発展に寄与するであろうということだ。
そして、次のステージにあなたが先頭に立って上がることができるということだ。
「バイヤーは仮説思考でトップになってみろ!!」